使用済みの漁網、気候変動対策の一助となるか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
漁網の切断をするジョシュア・ティアトゥスさん/Paul Glader/CNN

漁網の切断をするジョシュア・ティアトゥスさん/Paul Glader/CNN

漁網が手に入ったドブデ氏は、環境や労働問題、透明性への懸念から、リサイクルしたナイロンを中国に送ることはしたくなかった。最終的に出会ったのが、米カリフォルニア州を拠点とするブレオ社だ。この会社では毎年廃棄される180億ポンド(約810トン)の海洋プラスチック問題に注力し、最も有害と考えるプラスチック、つまり漁網の除去を目指している。

ドブデ氏のチームが漁網を回収し、裁断して、チリにあるブレオ社の製造拠点に送る。ブレオ社はそれをナイロンペレットに加工し、それを原料に「ネットプラス」という素材を製造する。ネットプラスはパタゴニア、イエティ、トレックといったブランドの生地やサングラス、その他製品に使用される。

ブリコレ社は昨年500トン以上の漁網をリサイクルしている。ブレオ社のシグレン氏によれば、セーシェルは同社のナイロン製造にますます貢献することが予想され、将来的には製造量の最大25%に達する可能性がある。その結果ブレオ社も、2年以内にアフリカかアジアにナイロンの処理拠点を設立し、ナイロンを海上輸送するのではなく、地元で加工できるようにする計画を立てているという。

調査会社グランドビューリサーチによると、ナイロン業界はデュポン社、BASF社、ドモケミカルズ社などの企業が年間310億ドル(約4兆5100億円)近い売り上げを上げており、今後も年率5%の成長が見込まれている。ブリコレ社やブレオ社の活動は、今後そうした収入の大半を新しく製造されたナイロンではなく、リサイクルのナイロンが担っていくことを示唆している。

ブリコレ社の今後の展望

マグロ漁業会社から漁網提供の知らせが入ると、ドブデ氏はクレーン車などの機材を借りて、漁網を造船所近くの作業場に運搬する。6人の作業員が網をほどき、研磨した台所包丁で2メートル×3メートルのパネル状に切断する。

先日ブリコレ社の倉庫オフィス裏にあるコンクリートの中庭で、太陽の日差しのもとジョシュア・ティアトゥスさん(19)が忙しそうにナイロン製の網を切断していた。素足でコンクリートの上に立ち、ヘッドホンからはレゲエの音楽が流れている。

この仕事について「友人が教えてくれた」とティアトゥスさんは言った。

ブリコレ社が調達したナイロン製の漁網で作られた100%リサイクル生地のサンプルをブレオ社から受け取ったドブデ氏は、地元のアート・デザイン学校に生地を送って、生徒たちに製品化のアイデアを募るつもりだ。地元の創造的なアイデアをパートナー企業が製造する最終製品に落とし込みたい考えだ。

「こんなことができるんだと国や世界に示す実証プロジェクトになるだろう。これがセーシェル製だと言えるようになりたい」(ドブデ氏)

「環境問題」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]