ガザ支援物資待ちの群衆に攻撃、「小麦粉虐殺」の実態をCNNが検証

イスラエル軍の攻撃を受ける支援物資待ちの群衆を捉えた映像の静止画像/IDF

2024.04.13 Sat posted at 13:45 JST

(CNN) パレスチナ自治区ガザ地区北部のガザ市で2月29日未明、支援物資を受け取ろうと集まった住民ら100人以上が死亡、700人が負傷する惨事が起きた。現場で何が起きたのかについて、ガザ側とイスラエル側の説明は食い違っている。CNNは独自に22人の目撃者から証言と映像を集めた。

ジハード・アブワトファ氏(27)はガザ市の海岸に立っていた時にイスラエル軍の戦車が近づいてくるのを目撃し、携帯電話で撮影を始めた。

目の前を銃弾が次々に通り過ぎていく。周囲では数百人のパレスチナ人が支援物資を待っていた。ガザ北部では、1カ月前から途絶えていた物資搬入が再開したばかりだった。

CNNが取材した住民ら22人のうち、多くは家族に食べさせるものを探して市外から来ていた。支援トラックの車列がイスラエルに指定された南北ルートの検問所を通過したのと同時に、イスラエル軍が群衆に向かって発砲を始めたと、住民らは振り返る。

それでも後には引かなかった。小麦粉を取りに行かずに命が助かっても、代わりに餓死するしかないことが分かっていたからだ。

ガザの保健省は、同日の銃撃で数十人が死亡し、負傷者は銃で撃たれた傷の手当てを受けたと主張した。これに対してイスラエル軍は、食料を求めて押し寄せた住民らが折り重なるように倒れたり、混乱を避けて走り去ろうとするトラックにひかれたりしたケースがほとんどだと説明した。

イスラエル首相の特別顧問を務めるマーク・レゲフ氏は当初、CNNとのインタビューでイスラエル軍の関与を否定した。軍のハガリ報道官はその直後、兵士らは群衆に直接発砲せず、空中に威嚇射撃をしただけだと述べた。

イスラエル軍はさらに内部調査の結果、3月8日に当時の時系列を発表した。それによると、支援トラックは午前4時29分にガザ北部への境界を越え始め、戦車がこれに伴走した。同4時30分に「警告射撃」をした後、脅威を及ぼしていた「容疑者たち」に向かって発砲した。同4時45分にも警告射撃を繰り返したという。

29日未明、火をおこして支援物資の到着を待つ人々

一方、CNNが当時の映像と目撃証言を分析したところ、この主張には疑問点が浮上した。証拠を調べた法医学や銃弾の専門家によると、車列が検問所を通過し始めたとされる時刻より前から機関銃の攻撃が始まり、群衆が至近距離から撃たれていたことがうかがえるという。

現場で目撃したというパレスチナ自治政府の通信社WAFAの記者は当時CNNに、まずイスラエル軍の銃撃が始まり、そこから逃れようとして支援トラックにひかれた死傷者が多いと話した。

イスラエル軍は、ドローン(無人機)の暗視カメラで群衆が倒れた場面を撮った映像を公開し、戦車の目的は車列の防護だったと主張した。ただし映像は画質が悪く編集されているため、真偽を確認することは難しい。

映像には、大通りで数百人が支援トラックの周りに集まった場面が映っている。多くの人が走ったり、はって逃げようとしたりしているが、その原因を示す瞬間はとらえられていない。次の場面では地面に横たわった人の姿が見える。生死は判別できない。

群衆がはっきり見える映像はこれしかない。CNNはイスラエルに編集なしの映像を求めたが、拒否された。

CNNが入手した目撃者の映像はすべて暗闇の中で撮影されたため、はっきりした状況は確認できないが、映像の付帯情報から撮影時刻などが分かる。

午前2時から3時の間に撮影されたビデオには、検問所から900メートルほど離れた海岸や路肩でたき火を囲んだり、語り合ったりして待つ集団が映っている。

シファ病院の外で犠牲者を悼む人々

目撃者の1人がCNNに見せた映像では、午前4時22分の時点で銃声が響き、人々が逃げ出していた。戦車が来ると叫び、周囲に避難を促す声も聞こえる。

アブワトファ氏はCNNに、銃声が聞こえた直後に撮影を始めたと話した。付帯情報によると、撮影時刻はイスラエル軍の「警告射撃」より2分早い4時28分だった。

専門家の分析によると、1分間に600発という連射だった。アブワトファ氏はそのまま撮影を続けた。4時30分にはトラックが道路を走り、イスラエル軍の戦車がある南西方面から複数の曳光弾(えいこうだん)がほぼ水平に飛ぶのが見えた。

銃声が激しくなるなか、アブワトファ氏はトラックから小麦粉1袋を入手して持ち帰ったという。

翌朝の現場には、頭部や胸に傷を負った遺体が散乱していた。CNNは、市内のシファ病院で手当てを受けた負傷者7人からも話を聞いた。左肩を撃たれて包帯を巻いた男性は、助けが来たのは夜が明けてからだったと話した。

別の男性はCNNに、車列から小麦1袋を受け取って歩き出した時に撃たれたと話した。

シファ病院の医師の1人は家族のために食料を取りに行き、イスラエル軍の発砲でパニック状態に陥った人々を目撃。自身も左脚を撃たれたが、自分で包帯を巻いて病院へ戻り、運び込まれる負傷者の治療にあたったという。

CNNの調査によると、支援物資の一部は英国に拠点を置くイスラム系の救済・開発支援団体が発送していた。同団体の管財人はCNNとのインタビューで、「過去20年の活動で、支援物資に血が交じるのを見たのは初めてだ」と衝撃を語った。

支援物資待ちの群衆に攻撃、新たな情報が浮上

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。