交通取り締まりの警官が96発発砲、ドライバーの男性死亡 米シカゴ

米イリノイ州シカゴで交通取り締まり中の警官が96発発砲しドライバーの男性が死亡した/Scott Olson/Getty Images

2024.04.10 Wed posted at 15:58 JST

米シカゴ(CNN) 米イリノイ州シカゴの住宅街で、シカゴ警察の警官が交通取り締まりで車を止め、運転していた男性に向かって96発もの銃弾を発砲していたことが、9日に公開されたボディーカメラの映像で明らかになった。銃弾を浴びた男性は死亡し、警官による過剰な武力行使だった疑いが浮上している。

死亡したのは車を運転していたデクスター・リードさん(26)。これまでの捜査によると、警官に対して最初に発砲したのはリードさんだったと思われる。しかし男性の家族や弁護士は、複数の私服警官が銃を抜いてリードさんの車を取り囲んだ経緯や、何十発も発砲した理由に疑問を投げかけている。

事件は3月21日、シカゴ市内の住宅街ガーフィールドパークで発生。ボディーカメラの映像は、シカゴの警察説明責任市民事務所(COPA)が9日に公開した。COPAは警官の不正行為や発砲について調査する市の機関。

この映像によって事件の経緯が明らかになる一方で、新たな疑問も次々に浮上している。

映像に映った事件の経緯

映像のうち1本には、フード付きジャケットとベースボールキャップ、バッジの付いたタクティカルベスト姿の警官1人が、白い車に近付く姿が映っている。車の窓はスモークガラスで中はよく見えない。

「窓を下ろせ。窓を下ろせ」という警官の指示に従い、ドライバーは窓を開けたが、すぐにまた閉め始めた。

警官は「何やってるんだ」「ドアを閉めるな」と叫んでドアハンドルに手をかけたが、ドアはロックされている様子だった。そこで警官は銃を抜く。「今すぐロックを開けろ」と怒鳴る声が、別の警官からも聞こえた。

ドライバーは「OK、やろうとしてるんだ」と応じた様子だった。

数秒後、警官が車から身を引いたところで、銃声が響いた。

続いて何十発もの銃声が連続する。

別のボディーカメラ映像は、少なくとも2人の警官が、住宅街の通りをはさんでリードさんに向け発砲する姿をとらえている。警官は2人とも、途中で銃撃を止めて弾丸を再装填していた。

銃撃がやむと、リードさんは車の後ろにうつ伏せに倒れていた。

「彼が最初に我々を銃撃した」と1人の警官が言った。

およそ1分後、無数の銃弾を浴びたリードさんの車を警官が調べて「銃がここにある」と告げ、懐中電灯で車内を照らした。

この銃撃で警官1人が手首を撃たれ、病院に運ばれた。シカゴ警察によると、経過は良好だという。

警官の行為が正当だったかどうかについては、現在、複数の機関が調査している。

リードさんに近づき命令する警察官

発端はシートベルト違反

シカゴ警察説明責任市民事務所の9日の発表によると、シカゴ警察の警官5人は、リードさんがシートベルトを着用していなかったとして車を止めさせた。

複数の警官がリードさんの車を取り囲み、口頭で命令したが、リードさんが命令に従わなかったことから銃を抜いてリードさんに銃口を向けた。これが銃撃戦に発展してリードさんが死亡、警官1人が手を撃たれた。


射殺された現場を捜査する警察=3月21日、米イリノイ州シカゴ/WLS

「映像と当初の報告を検証した結果、リードさんが最初に発砲して警官に命中し、4人の警官が撃ち返したことが確認されたようだ」と同事務所は述べている。

「リードさんが車を出て地面に倒れた後も含め、警官が41秒の間におよそ96回撃ち返していたことも確認された」

「リードさんは何発もの銃弾を浴び、搬送先の病院で死亡が確認された。銃はリードさんの車の助手席で回収された」

死亡したデクスター・リードさん

「殺人そのものでしかない」

リードさんの家族や弁護士は、何人もの警官が(うち数人は私服でタクティカルベストを着けていた)銃を抜いてリードさんの車を包囲した理由が分からないと訴えている。

スティーブン・ハート弁護士は、「単純な交通違反やシートベルト未着用のために、なぜ警官が銃を抜いて覆面パトカーから飛び出したのか」と疑問をぶつけた。


死亡したデクスター・リードさん/Porscha Banks/Action Injury Law Group

リードさんのおじのルーズベルト・バンクスさんは、警察の映像を見て「自分ももしあんな状況に置かれたら、恐怖に襲われるだろう。どうしたらいいか分からず、自分の身を守るしかない」と語り、「私から見れば殺人そのものでしかない」と語気を強めた。

一方、シカゴ警察組合の代表は、警官の行動を弁護すると表明した。

シカゴ警察は9日、今回の銃撃についてはCOPAがシカゴ警察の全面的な協力を得て捜査を続けていると発表。同州クック郡州検事は同日、法で認められた範囲を越えて武力が使われたのかどうかを、証拠に基づき判断すると表明した。

交通取り締まりの警官が96発発砲

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