中国最大の富豪が率いる飲料メーカーに不買運動 愛国心に欠けると非難の声

鍾睒睒氏=2013年、中国・北京/Zhan Min/VCG/Getty Images/File via CNN Newsource

2024.03.14 Thu posted at 14:45 JST

香港(CNN) 中国最大の富豪で飲料メーカー国内最大手の農夫山泉を率いる鍾睒睒氏に対して、国家主義者たちが相次いで非難の声を浴びせている。本人の愛国心の欠如を糾弾するこうした動きは同社の株価を直撃。売り上げにも悪影響を及ぼす恐れがある。

鍾氏と農夫山泉は、熱狂的に対象を攻撃するネットユーザーらにとっての最新の標的となった。ボイコットの呼び掛けも起こり、通常は愛国的な国営メディアまでもが警戒感を示している。現在中国政府は民間企業に対する後押しの強化を図り、経済低迷の対策の一助にしようとしている。

非難の引き金は、農夫にとって最大のライバル企業の一つである娃哈哈(ワハハ)グループの創業者、宗慶後氏が先月死去したことだった。国家主義者として尊敬を集めた宗氏は約20年前、仏ダノングループとビジネス訴訟を争い、勝利したことで知られる。

死去した宗氏と比較される形で、鍾氏に対する批判が噴出した。批判の内容には農夫の商品パッケージのデザインに日本の鯉のぼりを思わせるイラストを使用していること、同社の非業務執行取締役で事業を引き継ぐ可能性のある鍾氏の息子が米国籍を所有していることなどが含まれる。

中国では農夫山泉の商品パッケージのデザイン(写真左)が日本の鯉のぼり(右)に似ているという意見もある

中国大手SNS「微博(ウェイボー)」のあるユーザーは、鍾氏の資産を受け継ぐとみられる息子について「将来中国最大の富豪になる人物が米国籍だなんて信じられない」と書き込んだ。

また、自国への思いがない人物は「どれほど裕福であろうと、中国人の心を持つ庶民に及ばない」とも指摘した。

非難の声を寄せる国家主義者らは、農夫の主要な株主がバンガードやブラックロックといった米国の有力な投資ファンドである事実にも焦点を当てている。

別のユーザーは「ゆくゆくは(息子が)米国籍者として会社を運営する。しかし中国人である自分が応援するのは自国のブランドだけだ」と書き込んだ。

ネット上はボイコットを呼び掛ける声であふれている。ある短い動画には、小さな商店が店頭に並べる飲料水全商品を農夫から娃哈哈に入れ替える様子が映っている。

ネットでの運動は農夫の株価に打撃を与えた。香港市場での同社の株価は2月末以降5%近く下落。CNNの計算によると、時価総額で約30億ドル(約4430億円)が吹き飛んだことになる。

ブルームバーグ通信のビリオネア(保有資産10億ドル以上の富裕層)指数によれば、鍾氏の個人資産も3月1日以降20億ドル目減りしたものの、現在の保有資産は645億ドルで依然として中国最大の富豪だという。

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