ロシア軍、ウクライナの新たな防衛線に攻勢

最近ロシア軍に占領されたウクライナ東部の要衝アウジーイウカの化学工場/Inna Varenytsia/Reuters

2024.03.05 Tue posted at 14:00 JST

(CNN) ウクライナ軍が東部の要衝アウジーイウカから撤退した後、ロシア軍は迅速に前進して、ウクライナの新たな防衛線に挑戦しており、ウクライナ政府の前線での戦術と勢いについて、懸念が強まりつつある。

ウクライナ軍は2月17日、アウジーイウカからの撤退を発表し、陣地を同市の西に移した。小さな集落3カ所がロシア軍に占領されたものの、ウクライナ政府は、そうした集落について防衛する意図はなかったと主張している。

ウクライナが後退すると明らかにした、より西側にある三つの集落を結ぶ防衛線はその後、ロシア軍による激しい攻撃を受けている。親ロシアの情報筋によれば、ロシア政府は三つの集落全てを部分的に占領したと主張している。ウクライナはこうした主張を否定している。

ウクライナ軍は軍需品の面で深刻な危機に直面している。弾薬は配給制にしなければならず、ロシアの圧力にどれだけ耐えることができるのか疑問を抱いている前線の部隊にとって、存亡の危機に近い議論となっている。

高まる不安のもう一つの兆候は、新たに軍総司令官に起用されたオレクサンドル・シルスキー氏が前線での低調な戦果をめぐり、過去1週間で2度、部下の将校を叱責(しっせき)したことだ。

シルスキー氏は約3週間前、人気の高かったバレリー・ザルジニー氏の後任として、総司令官に起用された。

シルスキー氏は、ロシア軍が勢いを取り戻した戦場を受け継いだ。戦場では、西側諸国からの援助や、ウクライナ軍の弾薬や人員が不十分で、ロシア軍はそうした状況を有効に利用している。

先ごろウクライナ軍の総司令官に起用されたオレクサンドル・シルスキー氏

アウジーイウカ周辺のウクライナ軍の新たな防衛線に対するロシアの攻撃が重要なのは、小さな集落そのものの価値ではなく、ウクライナ当局がアウジーイウカからの撤退について十分に計画を立案せず、ロシア軍の進軍を食い止めることができていないことを示唆している点だ。

ロシア政府は、ウクライナ東部のドンバス地方の占領を目標に掲げているほか、ウクライナの「非武装化」も望んでいる。

複数のウクライナ軍兵士はCNNの取材に対し、アウジーイウカからの撤退の意味と今後数週間先の防衛の見通しについて、悲観的な見方を示した。

特殊部隊の兵士のひとりは、ロシア軍の勢いというよりは、ロシア軍の進軍を食い止めるための準備が不十分だったと指摘。準備の整った陣地を確保できない限り、ウクライナ軍は後退し続けることになると語った。

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