日本の月探査機「SLIM」、予期せぬ姿勢で着陸も最初の月面画像公開 JAXA

LEV―2が撮影した月探査機「SLIM(スリム)」/JAXA

2024.01.26 Fri posted at 13:00 JST

東京(CNN) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、「ムーンスナイパー」の異名を取る月探査機「SLIM(スリム)」が月面の目標地点から55メートルの位置に着陸したことについて、意義深い成功との見方を示した。ただ着陸時に発生した問題により、ミッション自体は遂行が危うい状態にある。

JAXAが共有したデータによると、無人機のSLIMは米東部時間19日午前10時20分(日本標準時20日午前0時20分)すぎに着陸を果たした。

JAXAの担当者は記者会見で、月面への降下中、高度50メートル付近で何らかの異常が発生したと説明。このためメインエンジン1基の推進力が失われ、エンジンが上を向いた、ほぼ鉛直の姿勢での接地を余儀なくされたという。

現在、探査機の太陽電池は想定した上方ではなく西方向を向いている。太陽電池での発電が可能になった際に安定した状態でシステムを再起動する電力を残すため、内蔵バッテリーの電源は切られている。

探査機が夜間の極寒状態に耐えられれば、今後月面に当たる太陽の角度が変わり、発電の回復からのシステム再起動も可能になると、JAXAは期待を寄せる。

月面スキャン撮像モザイク画像。SLIMの月面着陸後に送られてきた

JAXAは着陸後のSLIMと連絡が取れたとして、月面のSLIMから送信された最初の画像を公開した。

画像はマルチバンド分光カメラで捉えたSLIM周辺の風景で、257枚撮影。チームはこれらの画像を解析し、写り込んだ岩にはそれぞれ興味深いニックネームをつけて大きさの推計などを行っている。


SLIM搭載マルチバンド分光カメラが捉えた月面の画像の拡大図。観測対象の岩石に愛称をつけた/JAXA/Ritsumeikan University, The University Of Aizu

SLIMが再起動すれば、着陸地点についてより詳しく観察できるようになるとみられる。

SLIMが着陸したクレーターは、「神酒(みき)の海」と呼ばれる月の表側の地形に位置する。

JAXAは着陸中の異常やメインエンジンの推進力喪失の原因について、現在調査中だとしている。

着陸前、SLIMは小型観測機「LEV―1」「LEV―2」の放出にも成功していた。LEV―1は跳躍(ホッピング)しながら移動する仕組みで、広角レンズのカメラやアンテナなどを搭載。地球との通信が可能となっている。

「SORA―Q」の愛称で知られるLEV-2もカメラを備え、機体を変形させることで月面を移動することができる。

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