パレスチナ人の大多数、イスラエルに戦争仕掛けたハマスを支持 政治的解決は見えず

ヨルダン川西岸ラマラのアルマナラ広場を歩く人/Abeer Salman/CNN

2023.12.22 Fri posted at 11:05 JST

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラ(CNN) パレスチナ人はイスラエルとの戦争に突入したイスラム組織ハマスの判断を圧倒的に支持しているという世論調査結果が、このほど発表された。

この調査はパレスチナ政策調査研究所(PCPSR)がヨルダン川西岸の成人750人と、ガザ地区の481人を対象に面接方式で実施。ガザでの調査は一時休戦中に行われた。

ハマスが10月7日にイスラエルに仕掛けた攻撃について、回答者の72%は「正しい」と回答した。「正しくない」という回答は22%に満たなかった。

PCPSRを運営するカリリ・シカキ氏はこの結果について、虐殺を支持しているわけではないと強調し、「ハマスがこの日犯したかもしれない虐殺に対する支持とみなすべきではない」とした。


パレスチナ政策調査研究所(PCPSR)のカリリ・シカキ氏=パレスチナ自治区ラマラ/Abeer Salman/CNN

「パレスチナ人は、自分たちには外交や交渉の選択肢がないと信じ、暴力と武力闘争のみがガザに対する封鎖やイスラエルによる占領を終わらせる唯一の手段だと信じている」(シカキ氏)

回答者の約80%は、自分たちの女性や子どもの殺害は戦争犯罪だと回答している。

イスラエルとの戦争により殺害された子どもたちの写真=パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラ・アルマナラ広場

一方で、10月7日にハマスが犯した行為を伝えた外国メディアのニュース映像については、85%が見ていないと回答。ハマスがこの日、戦争犯罪を犯したという回答は10%にとどまった。

武力行使に対する見方はガザ地区とヨルダン川西岸で分かれている。武力闘争に対する支持は、ガザ地区では2022年9月の50%から23年12月の56%へと、わずかな上昇にとどまった。一方、ヨルダン川西岸では22年9月の35%から23年9月には54%へと急増し、12月に入って68%に達した。

シカキ氏はこの背景について、ヨルダン川西岸でイスラエル人入植者のパレスチナ人に対する暴行や襲撃が増えたことと関係があると分析する。

ヨルダン川西岸で政党としてのハマスを支持するパレスチナ人は、今年9月から12月の3カ月間で12%から44%へとほぼ4倍に増えた。

一方ガザ地区では、ハマスに対する支持率は9月が38%、12月は42%とほぼ横ばいで推移する。

パレスチナ自治政府のアッバス議長率いる政党ファタハの支持率は、自治区全体で3カ月前の26%から現在の17%にまで急落した。

イスラエル側から見たパレスチナ自治区ガザ地区=12日

ただ、シカキ氏によると、現状ではハマスの方が高い支持を得ているものの、10月7日のハマスによる残虐行為の現実を知るパレスチナ人が増えれば、見方が変わる可能性もある。

ハマスが10月7日に犯した残虐行為の映像を見たという人は、ガザ地区では25%だった。同地区の全回答者のうち16%はハマスが戦争犯罪を犯したと答えている。一方、西岸でこの映像を見た人は7%、戦争犯罪だと答えた人は1%だった。

ガザ地区で戦争後もハマスによる統治の復活を望むという住民は、現状でも38%にすぎない。

イスラエルによる占領を終わらせる唯一の方法はイスラエルに苦痛を与えることだとパレスチナ人が信じている現状の中、ハマスは最も効果的に暴力を実行できる政党とみなされているとシカキ氏は解説する。

一方で、「もしも交渉を通じてイスラエルの占領を恒久的に終わらせ、パレスチナ国家を樹立する選択肢をパレスチナ人に与えれば、ハマスに対する支持は恐らく低下して、戦争前を下回るだろう」とシカキ氏は言う。

2国家解決の支持率は、ガザ地区でもヨルダン川西岸でもここ3カ月は32%~34%と低迷しており、過去に比べると低い水準にある。PCPSRの過去の世論調査では、独立国家パレスチナとイスラエルの共存を70~80%が支持していた。

米国のジョー・バイデン大統領は交渉を重視してイスラエルとパレスチナを説得したい意向で、先月は「2国家解決が実現するまで(この紛争は)終わらないだろう」と発言していた。問題は、パレスチナ人が米大統領を信じていないことにある。パレスチナ国家樹立に関する米国の発言を真剣だとは思っていないという回答は70%に上った。

「あれだけの力を持っていながら、イスラエルに対する影響力は行使できないという相手を人々は信じない。だから、2国家解決はリップサービスにすぎず、それを実現させる意図は全くないと判断している」とシカキ氏は指摘した。

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