ボローニャの斜塔、「突然の倒壊」の可能性 市が対策立案

ボローニャの中心的シンボルとなっている2つの斜塔/Pol Albarrán/Moment RF/Getty Images

2023.12.08 Fri posted at 17:50 JST

(CNN) イタリアのボローニャ中心部で1000年近く前に建造された斜塔「ガリセンダの塔」について、「突然の予期しない倒壊」に備えて市民を守る計画を市が立案している。

市の発表によると、塔が倒壊した場合に備えて金属製の防護壁を設置し、がれきによる周辺の建物や人への被害を防ぐ計画。侵入できない立ち入り禁止区域も設定する。

防護柵は地面に固定し、やはり金属でできた特製の落石防護ネットを取り付ける。

塔の倒壊の可能性は、2019年から監視を続けてきた科学委員会がまとめた報告書の中で指摘した。

報告書では、現状を「厳戒」状態と位置付け、「市民保護計画の枠組み内を除き、同タワー内や周辺で安全に活動できる状況はもはや存在しない」とした。

この1カ月の検査の結果、塔の基部の破砕圧縮が予想外に加速する傾向が明らかになったと報告書は指摘。基部を覆う石が徐々に崩れ、上部のレンガの亀裂も大きくなっているとした。

既に進行中だった補強作業は中断されており、できるだけ早期に排他区域を設ける予定。

10月に塔の周辺の立ち入り禁止が命じられた

ただ、ガリセンダの塔は崩壊寸前の状態にあるわけではないと、広報はCNNに説明した。


立ち入り禁止区域が設置される「ガリセンダの塔」の周辺/Comune di Bologna

「我々は最悪の事態を想定して行動しているが、必ず起きるということではない」と広報は述べ、現状は差し迫った倒壊の危険がある「赤」警報ではなく、「黄」警報の段階にあると説明。「いつ倒壊するかは誰にも分からない。3カ月後かもしれないし、10年、20年先かもしれない」とした。

その上で、「差し迫った倒壊のリスクがあれば全員を避難させる」と強調し、監視装置の測定値が15分ごとに届くので、倒壊の兆候があれば周辺地域から避難できると言い添えた。

12世紀に建造されたガリセンダの塔は、ボローニャで有名な「ツインタワー」の一つで、高さは48メートル。当時のボローニャには地元の有力者が競って建築した高層塔が林立していた。今ではほとんどが残っておらず、残っている建物の多くは上部を取り払って普通の住宅に改装されている。

周辺を封鎖する非常線は来年2月までに完成予定

ガリセンダの塔の傾斜は4度と、有名なピサの斜塔の5度に比べるとやや少ない程度。ダンテが神曲「インフェルノ」を創作した14世紀初めには既に傾いており、ダンテは塔の傾いた側を見上げた際の目がくらむような感覚を描写していた。隣には2倍の高さのアジネッリの塔があり、こちらは先月まで観光客に公開されていた。

ボローニャ市長は10月に、2つの塔の周辺の立ち入り禁止を命じたが、これは安全対策よりも調査の目的だった。ガリセンダの塔の周りには音響センサーが設置されてひび割れやきしみの音を監視。両方の塔に設置された振り子では、通常の振動が基準値を超えていないかどうか確認している。

この調査で、ガリセンダの塔の基盤の圧縮が増大しているだけでなく、塔の傾きが東または南東の方角から南の方角へと90度変化し始めていることが分かった。

市の広報によると、状況は7月以来、確実に悪化を続けている。

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