どこへ行っても空爆と飢え、ガザ住民に迫る死の恐怖

イスラエルによるガザ中部デイルアルバラ空爆後、廃墟と化した難民キャンプの居住区域/Ashraf Amra/Anadolu/Getty Images

2023.12.07 Thu posted at 20:00 JST

エルサレム/アブダビ(CNN) 調理油の容器6本を抱えた男性が、苦労しながらがれきの中を歩いていた。2人の幼い女の子は、暖房や料理用の火を起こすために使う紙束を持って走っている。男性のグループが互いに小突き合いながら、1袋の小麦粉やお茶、置き忘れられた毛布を求めて争っていた。

パレスチナ自治区ガザ地区中部のデイルアルバラ。イスラエルの空爆とみられる4日の攻撃で、住宅や道路に加え、ガザ地区で残っていた数少ないパン店の一つ、バラカベーカリーも破壊された。

イスラエル国防軍は5日、パン店に関するCNNの質問に対し、「ハマスがイスラエルの男性、女性、子どもたちを意図的に攻撃するのとは対照的に、イスラエル国防軍は国際法に従い、民間人の被害を軽減するために実行可能な予防措置を講じている」と強調した。

デイルアルバラはイスラエル軍の爆撃が激しくなっている。イスラエルはガザ南部でも一部地域からの退避を呼びかけ、デジタル地図を公開しているが、この地図は分かりにくく、電気もインターネット接続もないことから利用できないと住民は訴える。

住民によると、デイルアルバラは夜間に空爆され、朝になると住民ががれきを掘り起こしていた。ただ、この時住民が必死になって探していたのは、食料などの生活必需品だった。

住居を失い、ガザ南部での食料の提供に群がる人々

イスラエルとハマスの戦争は9週間目に入り、必死に生き延びようとする人々による略奪が伝えられるなど、社会秩序は崩壊し始めている。10月9日以来、イスラエルは200万人あまりのパレスチナ人が暮らすガザ地区の水、食料、電気を途絶えさせた。

12月4日にCNNの取材に応じた住民の男性は「めちゃめちゃだ」と言った。背後では大勢の人たちががれきの下敷きになった物資をあさっていた。孤児院も攻撃されたとこの男性は話している。

自宅が破壊されたという別の住民の男性は、飢えがガザの住民を絶望的な行動に駆り立てていると語った。「あの人たちを見てほしい」とがれきをかき分ける人たちを指さした男性は、「全部飢えのためだ」と訴えた。

国連世界食糧計画(WFP)によると、ガザは全住民が食糧支援を必要としている。今回の衝突が始まった時点でWFPはパン店23店舗を運営していたという。「だが食料システムは崩壊している。WFPが運営していた最後のパン店は、燃料もガスもなくなって閉鎖した」(WFPのウェブサイト)

デイルアルバラのパン店バラカベーカリーは、パンを提供して住民の苦しみをやわらげてくれていたと別の住民は言い、「パン店は軍事作戦から除外すべき」「(パン店に対する)攻撃はテロとみなすべき」と話す。

イスラエル軍が投下したQRコード付きのビラを手にするパレスチナ人

ガザではイスラエルの避難の呼びかけに応じて住民が避難することもある。しかし多くは、どこへ行こうと空爆や飢えによる死の恐怖からは逃れられないと言う。

イスラエルは、住民に避難場所を示す地図を提供していると主張する。

イスラエルが投下するビラにはQRコードが記載されていて、これをスマートフォンで読み取るとガザ地区の地図が表示され、イスラエルが指定する安全区域と危険区域が示される仕組み。

しかし地図を利用できるパレスチナ人はほとんどいない。ビラを見ていないという人もいれば、ビラを見たとしても、電気もインターネット接続もイスラエルが遮断しているために、バーコードをスキャンできないという人もいる。

「インターネットが使えなくなってから、もう50日になる」。デイルアルバラに避難している住民はそう語った。「デイルアルバラの次がどこなのかは神のみぞ知る」

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