10日間で女性5人が犠牲に、DV問題の解決模索 豪

校門の外で花を手向けるセントアンドリュース・カテドラル・スクールの生徒=10月30日/Dean Lewins/AAP Image

2023.11.06 Mon posted at 16:00 JST

オーストラリア・ブリスベン(CNN) オーストラリア各地で10日の間に5人の女性が夫やパートナーなどに殺害される事件が相次ぎ、関係者を茫然(ぼうぜん)とさせている。

女性団体の統計によると、オーストラリアでドメスティックバイオレンス(DV)の犠牲になった女性は今年に入って全土で43人に上る。

直近では10月30日、西オーストラリア州パース市内のホテルの客室で、弁護士のアリス・マクシェラさん(34)が死亡しているのが見つかった。その後、一緒の部屋にいた42歳の男が殺人罪で訴追された。

同月29日にビクトリア州の住宅で死亡したアナリン・オシアスさん(46)は、44歳の男に殺害されたとされる。

その数日前、水球指導者だったリリー・ジェームズさん(21)は、シドニー市内の学校の体育館のトイレで遺体が発見された。その後、元パートナーの男(24)ががけの下で死亡しているのが見つかった。自殺だったと思われる。


アリス・マクシェラさんはホテルで遺体で発見された/Alice McShera/Facebook

首都キャンベラでティ・トゥイ・フオン・グエンさん(65)が刃物で刺されて死亡した事件では、70歳の夫が殺人容疑で逮捕された。

その2日前、南オーストラリア州で民家の火災があり、焼け跡からクリスタル・マーシャルさん(38)の遺体が見つかった。この事件では48歳の男が殺人の罪に問われている。

オーストラリアでDVの犠牲になった女性は、2012年に女性団体が統計を取り始めて以来、毎年43~84人に上る。

クリスタル・マーシャルさん、アナリン・オシアスさん、リリー・ジェームズさん

オーストラリア健康福祉研究所(AIHW)によると、パートナーによるDV被害を届け出た女性の割合は、16年から21~22年にかけて、1.7%から0.9%に減少した。

しかし女性に対する暴力について21年にオーストラリア全土で実施された意識調査では、「DVは日常のストレスに対する正常な反応」とする回答が23%を占めた。

91%は女性に対する暴力をオーストラリアの問題と認識していた。

対策を求める声が強まったことを受け、政府は昨年、女性と子どもに対する暴力の撲滅を目指す国家計画を立ち上げ、今年8月に23~27年の第1次行動計画を発表した。


DV被害者を支援しているマヌエラ・ウィットフォードさん/Hilary Whiteman/CNN

オーストラリアは現代的な富裕国かもしれないが、国連によれば性差別的な意識が根強く残っており、女性の方が男性よりも家事労働を多く担う一方、生涯賃金は少ない。

女性のリーダーシップに関する国際研究所が22年に実施した調査では、オーストラリアの男性は世界平均に比べてネット上の女性差別的な発言を容認する傾向があった。

クイーンズランド州ブリスベンでDV被害者を支援しているマヌエラ・ウィットフォードさんは、女性のDV被害を防ぐためには地域社会が力を合わせる必要があると指摘し、「大丈夫ですかと声をかけない人が多いのは、その答えにどう対応すべきか分からないから」「だから知識を身に着け、自分の地域でどんなことができるのかを見つけてほしい」と話している。

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