ハマスはいかにして兵器を入手しているのか? 工夫と機略、他国の指南役の組み合わせ

武器を手にするハマスの軍事部門「カッサム旅団」の戦闘員ら=2017年1月撮影/Said Khatib/AFP/Getty Images/FILE

2023.10.12 Thu posted at 20:11 JST

(CNN) パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが先週末に遂行した残虐な攻撃には数千発のロケット弾とミサイル、爆発物を投下するドローン(無人機)が使用された。小型の武器や弾薬は数え切れないほどの数に上る。

ただ攻撃の起点となったガザ地区は地中海に面した広さ360平方キロの細長い区域で、一方はイスラエル、もう一方はエジプトと接している。

そこは貧しい人口密集区域で、資源はほとんどない。

しかもハマスが支配権を握って以降の17年近くは、世界からほぼ完全に切り離された状態にある。この間イスラエルとエジプトが厳重に地区を包囲し、現在もそれを継続しているからだ。

イスラエルは空路と海上の封鎖も維持し、大規模な監視態勢を敷いている。

ここで疑問が浮かぶ。一体ハマスはどうやってあれだけの量の武器をかき集め、連動した攻撃を成功させることができたのか? 攻撃によりイスラエルでは1200人以上が死亡、数千人が負傷した。同国を狙った一連のロケット攻撃も続いている。

専門家によれば、答えは一つではない。狡猾(こうかつ)さと臨機応変な対応、粘り強さの組み合わせであり、そこに重要な他国の後援者の存在も加わるという。

イランという因子

「ハマスは密輸や現地での製造を通じて武器を手に入れている。またイランから一定の軍事支援を受けてもいる」。米中央情報局(CIA)の年次刊行物「ワールド・ファクトブック」はそう指摘する。

イスラエル、米国両政府は、現在のところ先週末の攻撃でイランが直接的な役割を果たしたとは見なしていないが、専門家によれば同国は長年にわたりハマスへの軍事的な支援国であり続けている。武器は密かに掘られたトンネルや、地中海の封鎖をかいくぐった船舶を通じてガザ地区に持ち込まれる。

米シンクタンク、中東研究所(MEI)の上級研究員で国防安全保障プログラムを統括するビラル・サーブ氏は、「イスラエルとエジプトが定期的に機能を低下させているにもかかわらず、ハマスのトンネルインフラの規模は依然として巨大だ」との見解を示す。

また戦略国際問題研究所(CSIS)の多国籍脅威プロジェクトに携わるダニエル・バイマン上級研究員によると、ハマスがイランからトンネル経由で受け取る武器には、しばしば長距離システムが含まれる。さらに海上からより先進的な弾道ミサイルも輸送されていると、MEIのチャールズ・リスター上級研究員は明かす。これらは部品の状態で持ち込まれ、ガザ地区内で組み立てるという。

「イランはハマスによる現地での製造も支援している。これはハマス独自での武器の確保を可能にする」(バイマン氏)

レバノンを拠点とするハマスの幹部、アリ・バラカ氏は、組織内の兵器製造についてロシアトゥデーのアラビア語ニュースチャンネルとのインタビューで詳述した。編集済みのインタビューの内容は8日、同チャンネルのウェブサイトに掲載された。

それによると、ハマスは現地の工場であらゆる兵器を製造している。ロケット弾は射程が10キロ、80キロ、160キロ、250キロのものまで多岐にわたる。迫撃砲とその砲弾、カラシニコフ(自動小銃)とその銃弾のための工場もある。後者の銃弾は、ロシア側の許可を取って製造しているという。これらの武器がガザ地区内で生産されていると、バラカ氏は述べた。

ガザ南部に掘られたエジプトとつながる密輸用トンネルへ下りていくパレスチナ人男性

リサイクル

より大型の兵器に関しては、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)がハマスの技術者を対象とした研修を約20年間行っていると、MEIのリスター氏は説明する。

何年にもわたってより先進的なシステムに接することで、ハマスの技術者は必要な知識を身に着ける。それにより地元での生産能力が著しく向上するという。

「ハマスでミサイルやロケットの製造に携わる技術者は、イランの地域ネットワークの一部に組み込まれている。つまりイランで頻繁に研修や情報交換を行うのは、それ自体が同国による取り組みの一環であり、地域全体で自国の代理勢力の専門性を確立することを意図している」(リスター氏)

一方で、ハマスが自前の武器の原材料を調達する方法にも、彼らの工夫と機略が見て取れる。

ガザに重工業は存在しない。世界の大半の地域では、重工業が兵器の生産を支えている。CIAのファクトブックによれば、ガザの主要産業は繊維、食品加工、家具製造だ。

しかし主要な輸出品にはくず鉄が含まれる。くず鉄は地下トンネルでの兵器製造の原材料になり得る。

そうした金属は多くの場合、ガザでの破壊的な戦闘によりもたらされる。ワシントン近東政策研究所の2021年のフォーラムで、米国籍を取得したガザ出身の人権活動家、アフメド・フアド・アルハティブ氏はそう記述した。

ガザのインフラがイスラエルの空爆で破壊されると、後に残った金属薄板や金属管、鉄筋、電気配線は、ハマスの兵器工場に送られ、ロケット弾の胴体あるいはその他の爆発物として生まれ変わる。

イスラエル軍の不発弾も再利用され、ハマスの兵器の供給網に加えられると、アルハティブ氏は指摘する。

「イスラエル国防軍(IDF)の作戦は、間接的にハマスに原材料を供給している。それらは他の場合であればガザにおいて厳しく監視され、全面禁止の対象となる物資だ」(アルハティブ氏)

もちろん、全てが一夜にして起きたことではない。

7日にあれだけの弾薬を、かくも短い時間に発射したという事実は、ハマスがかねて自前の武器庫を増強してきたことを意味するはずだ。長年にわたって、密輸と製造の両方により武器は拡充されてきたと、米空軍の中東問題担当アナリスト、アーロン・ピルキントン氏は指摘する。

前出のハマス幹部、バラカ氏は、7日の攻撃の準備に2年を費やしたと明らかにした。

攻撃の計画では外部の関与に一切言及せず、ハマスの同調者が武器と資金を支援しているとだけ説明。何よりもまず、イランからそれらの提供を受けていると述べた。

アナリストらもまた、イスラエル及び他国の諜報(ちょうほう)機関と同様、ハマスによる攻撃の規模と範囲に不意を突かれたと口をそろえる。

米空軍のピルキントン氏は、大量のロケット弾が発射されたこと自体は実のところそれほど込み入った話ではないと指摘。驚くべきなのは数千発のロケット弾の備蓄、移動、配備、発射がイスラエル、エジプト、サウジアラビアなど他国の諜報の目を完全に逃れて実行された点だという。

イランの手引きなしにハマスがこれだけのことを成し遂げられるとは考えにくいというのが、同氏の見解だ。

本稿はCNNのブラッド・レンドン記者の分析記事です。

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