古代人の人骨、道具として使用するため掘り起こされていた 研究結果が示唆

スペイン南部にあるマルモレス洞窟/J.C. Vera Rodríguez

2023.09.30 Sat posted at 14:00 JST

(CNN) スペイン南部の洞窟で調査を行っていた研究者らが、古代人の埋葬人骨が後世の人々によって掘り起こされ、加工され、道具としても使用されていた証拠を発見した。

スイスのベルン大学の科学者らが率いる研究チームは、スペイン南部のグラナダ市近郊にあるマルモレス洞窟から出土した人骨を調査した。

調査の結果、紀元前5000年から紀元前2000年の間に埋葬された、少なくとも12体の人骨であることが判明。「骨髄やその他の組織を採取しようとした結果生じたと思われる骨折や擦り傷などがあり、死後、骨に意図的に手が加えられていた」と、9月20日に発表されたニュースリリースには記されている。

これに加え、脛骨(けいこつ)の一つは道具として使用するために加工されたようだ。

「まず脛骨が折られ、そのかけらの一端が何らかの物質を削るのに使われた」と、研究著者であるベルン大学の自然人類学研究員、マルコ・ミレラ氏は21日に電子メールで述べた。

研究者らによると、頭蓋骨(ずがいこつ)の周囲は、おそらく食事や実用的な用途に使われるため削られていたという。

こうした類いの人骨は「スカルカップス」として知られているが、必ずしも容器として使われていたことを意味するものではない、とミレラ氏は話している。

「今回の場合、頭蓋骨が加工されていたことが分かっている」「だが、いつものように文書による記録がないため、この行動の理由については、あらゆる説明をオープンにする必要がある」と同氏は述べている。

洞窟内で発見された人骨

研究チームは、頭蓋骨が加工されていたことは、先史時代にこの地域で「複雑な葬送行為」があったことを示唆していると付け加えている。

ミレラ氏は、今回の発見はこの地域の他の洞窟で発見された証拠と一致していると説明した。

「人骨に手を加えることは、この時代にはよく知られていたことで、同じ地域でも例がある。その意味で、マルモレス洞窟はこれらの文化の葬送行為について我々が把握していることと一致している」(ミレラ氏)

「非常に興味深いと思うのは、加工された骨の量のみならず葬儀のために洞窟が広く使われていたことだ」「これらの発見を総合すると、この洞窟が文化的に何世代にもわたって中心的な場であったことがうかがえる」と同氏は付け加えた。

この研究によると、イベリア半島南部ではとりわけ紀元前4000年ごろから人骨を加工する習慣が一般的になったが、その理由は定かではない。

「同じ地域にある他の似たような洞窟でも、同じように加工された人骨が確認されたことが分かっている」「死者とその物理的な人骨との結びつきが、社会的な記憶の保持と伝達、そして集団の結束のための媒体となっている文化に我々は取り組んでいる」とミレラ氏は説明した。

また、人骨を加工した人々は、その骨が誰のものであったかを知っていた可能性もあるという。

「人骨に施された加工は、死後長い年月が経ってから行われたものではない」として、ミレラ氏は「可能性はある」と述べている。

研究結果は9月20日、科学雑誌「プロス・ワン」に掲載された。

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