ウクライナ軍の東部攻勢、その内側を単独取材 CNN EXCLUSIVE

コントローラーを通じて標的を確認するドローンの操縦者/CNN

2023.09.27 Wed posted at 19:38 JST

ウクライナ東部(CNN) 暗闇の中、ウクライナ兵2人が身を寄せ合ってドローン(無人機)の操縦装置をのぞき込んでいる。彼らの顔を照らすのはスクリーンの光だけだ。

「おお、何か燃えているな」と1人が口にする。2人は先ほどロシア軍の目標に向けて爆弾を投下したばかりだ。

この夜間攻撃はウクライナ東部の激戦地バフムート近郊における攻勢の一環で実施されたもので、CNNはその様子を単独取材した。

「まず我々がロシアの最前線をたたき、味方が敵に向けて前進する」。「グルーブ」のコールサインで知られるドローン操縦士の一人はそう語った。

ウクライナの地上部隊は西側の暗視装置を装備しており、夜間作戦で優位に立つ。ただ、ウクライナ軍の対地攻撃機は暗闇での運用には適していない。そこで出番となるのが、「コード9.2」の愛称を持つドローン部隊だ。

「これらのドローンは夜間でも日中のように見通すことができる」「歩兵部隊を見つけ、車両や火砲など破壊する必要があるものを全て攻撃する」(グルーブ)

彼らが使用しているのはウクライナ製の無人機「バンパイア」だ。バンパイアは6枚の回転翼を備えたヘキサコプターで、軍に戦場で使うテクノロジーを供給するデジタル変革省主導の取り組みの一環として、ウクライナ政府が調達した。

「各ドローンには夜間でも効果的に稼働できるよう、熱画像カメラが搭載されている。搭載可能重量は最大で15キロに上る」。ウクライナの副首相兼デジタル変革相を務めるミハイロ・フェドロフ氏は8月、バンパイア270機を前線に送る方針を発表した際、テレグラムの動画でそう語っていた。

ドローン部隊「コード9.2」が使用する「バンパイア」

「軍はこれらを使って装甲車や戦車、敵の防御施設、要塞(ようさい)、弾薬庫を破壊する」という。

これこそ、グルーブや彼の部隊が行っていることに他ならない。

ドローンの暗視カメラを使って録画されCNNに提供された動画には、ロシアの複数の装甲車に向けて爆弾を投下する場面が映っている。ロシアの近代戦車「T90」を破壊した最近の攻撃の様子も確認できる。T90はウクライナに配備中の戦車の中では比較的新しく、性能も高度な部類に入る。

ドローン攻撃のペースが上がる中、他の部隊も戦場に加勢している。強力な火砲の音が響き渡り、米国から供与されたクラスター弾をロシアの陣地に次々と浴びせる。

グラート多連装ロケットシステムから発射された飛翔体(ひしょうたい)は、風切り音を立てて空を埋め尽くす。そこに迫撃砲部隊も加わり、フレアの助けを借りてロシア軍に狙いを定める。歩兵戦闘車は高速でロシアの前線に突入する。

まさに包括攻撃の様相だ。「フリント」のコールサインで知られるコード9.2の指揮官は司令部で取材に応じ、作戦の準備に何週間もかけたことを明らかにした。

「我々は1カ月以上にわたって準備を進めてきた」とフリント。そう語る間にも、部下がロシアの陣地に投下する弾薬を準備していた。

「これは連合攻撃だ」とフリントは付け加え、バフムート南郊への攻勢は最近の戦果を踏まえて立案されたものだと説明した。この地域ではウクライナがロシアの支配下にあった重要な領土を奪還することに成功している。

出発の前にドローンと弾薬をハンビー(高機動多用途装輪車両)に積み込むウクライナ軍兵士

南部の攻勢、東部の戦果

ウクライナ政府は供与された西側装備品の大部分を南部に集中させている。南部のウクライナ軍は2本の軸に沿って前進しており、オリヒウからメリトポリに向かう軸が一つ、ベリカノボシルカからベルジャンスクに向かう軸がもう一つとなる。

ロシア軍に陣地に突入するウクライナ軍を支援するため、ドイツ製のレオパルト2戦車や米国のブラッドレー歩兵戦闘車も南部に送られた。最終目標は黒海に到達し、クリミア半島につながるロシアの補給線を寸断することだ。現時点ではクライナの進軍は緩慢で控え目なものにとどまっており、奪還したのは南部にあるいくつかの小村に過ぎない。

南部攻勢に比べると、ウクライナ東部での作戦について語られることは少ない。東部ではロシア軍が昨冬バフムートに猛攻を仕掛けて以降、ウクライナ軍がゆっくりとではあるが着実に領土を奪還している。

「我々は東部の防衛線を突破しつつあり、攻撃も加えている」とグルーブは語る。ロシアの冬季攻勢に大きく貢献した傭兵(ようへい)集団ワグネルはこの地域に戻ってきたという。

「確かにワグネルも展開している」「彼らは素早く指揮官をすげ替え、ここに戻ってきた」

グルーブの見方では、ワグネルの存在にはロシア側の人員不足を補う狙いもある。「(ロシアは)周辺地域から部隊をかき集めてこの地域に投入している」「この地域にはそれほど多くの人員が残されていない」

それでも、現状は緩慢な消耗戦が続く。東部では南部前線に比べ高度な西側装備品の数が少なく、ウクライナ軍は体より頭を使わざるを得ない状況にある。

「我々は頻繁に作戦を変更している」。指揮官のフリントはそう説明する。「ボクシングのようなものだ。まずボディーを攻撃した後、狙いを頭に切り替える」

ウクライナのドローン部隊に密着

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