ナゴルノ・カラバフのアルメニア系住民が集団脱出、既に数千人が避難

ナゴルノ・カラバフから国境を越え、アルメニア外務省の登録センターに到着した人々/Alain Jocard/AFP/Getty Images

2023.09.26 Tue posted at 17:00 JST

(CNN) ノナ・ポゴシアンさんは25日朝、ナゴルノ・カラバフにある自宅の周りを歩き回りながら、スーツケースに詰め込んで何を持っていくべきか、何が一番大切なのかを考えようとしていた。

2階では9歳の双子の子どもが、何を置いていくかを決めなければならず、玩具1つひとつに涙を流していた。ポゴシアンさんはアルメニア・アメリカ大学の職員。ナゴルノ・カラバフの中心都市ステパナケルトでCNNの取材に応じた。

ポゴシアンさん一家はアルメニアに避難しようとしていた。数日前、アゼルバイジャンが隣国アルメニアとの係争地だったナゴルノ・カラバフを攻撃し、同地を奪還したと発表したことで、ナゴルノ・カラバフのアルメニア系住民12万人の大量脱出が始まった。

アルメニア外務省によると、現地時間の25日午後5時までに、6500人以上がナゴルノ・カラバフからアルメニアに到着した。

現地メディアによると、25日夕、車でアルメニアへ向かう住民が燃料を補給しようとしていたステパナケルト近郊のガソリンスタンドで、大きな爆発があった。

地元議員は「ガソリン倉庫が爆発した」とアルメニアの通信社に語り、「間違いなく犠牲者が出る」と語った。

同通信は25日、この爆発で数百人が負傷したと報じた。現地の人権オンブズマンの話として、地元病院で受けられる治療や医薬品には限界があり、負傷者の命を救うためには空路で緊急避難させる必要があると伝えている。

アゼルバイジャンの攻撃では200人以上が死亡し、大勢の負傷者が出た。カラバフ当局者はロシアが仲介した停戦を受け入れ、武装組織の解体で合意した。

置いていかなければならない玩具に別れを告げるポゴシアンさんの9歳の娘

カラバフ当局者はロイター通信に対し、アルメニア系住民の大多数はアゼルバイジャンで暮らすことを望まず、アルメニアへ避難すると予想。「99.9%は我々の歴史的な土地を離れることを望む」と語った。アゼルバイジャンは同地の住民の権利を保障すると強調しているが、アルメニア首相や各国の専門家は、ナゴルノ・カラバフのアルメニア系住民の民族浄化のリスクを繰り返し指摘している。

CNNの取材に応じた住民のポゴシアンさんは、自分が知る限り、ナゴルノ・カラバフに残る家族は1世帯もないと話し、「99.9%というのは間違い。100%だ」と語った。

アゼルバイジャンはアルメニア系住民に対して選択を迫っている。ナゴルノ・カラバフに残る住民はアゼルバイジャン国籍を受け入れる必要がある。そうでなければ脱出しなければならない。

カーネギー国際平和基金の専門家は、ナゴルノ・カラバフに残ってアゼルバイジャンによる支配を拒む住民に対し、アゼルバイジャンが武力を行使するのは確実だと予想。「もしアルメニア系住民が脱出せず、アゼルバイジャンのパスポートも受け入れなければ、自殺行為も同然だ」と指摘する。

アルメニアの通信社によると、アゼルバイジャンの軍事作戦後の捜索救助活動では、100人以上の遺体が見つかった。子ども2人と高齢の夫婦の遺体もあったと伝えられている。

SNSにはステパナケルトの住民が車に荷物を詰め込んだりガソリンを探したりする画像が投稿されている。同地はアゼルバイジャンを後ろ盾とする勢力が9カ月にわたって封鎖しており、食料や医薬品、燃料が不足していた。

ポゴシアンさんは夫と2人の子ども、両親、祖母の7人で26日に出発を予定している。もっと早く出発する予定だったが、数千人が脱出して道路が大渋滞になり、何時間も身動きできなくなっていると聞いて出発を遅らせた。

ナゴルノ・カラバフ、アルメニア系住民が集団脱出

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