外来種により発生する世界規模のコスト、年間62兆円 国連支援の報告で判明

ホテイアオイの中を進む船頭ら=6月6日、バングラデシュ首都ダッカにあるブリガンガ川/Munir uz zaman/AFP/Getty Images

2023.09.06 Wed posted at 12:24 JST

(CNN) 外来種の存在が世界にもたらすコストは少なくとも年間4230億ドル(約62兆円)に上ることが、国連の支援する機関による報告で明らかになった。外来種は動植物の絶滅を促す他、食糧安全保障を脅かし、地球規模での壊滅的な環境変化に拍車をかける。

旅行や国際貿易をはじめとする人間の活動により、各地の動植物はそれまで生息していなかった地域へ「前例のないペースで」拡大している。毎年200種の新たな外来種が記録されていると、主要な科学者らは指摘する。

世界中で知られる外来種3万7000種のうち、3500種は有害で「世界に深刻な脅威」をもたらすと考えられている。具体的には作物を破壊し、在来種を根絶やしにする他、河川の汚染、疫病の蔓延(まんえん)を引き起こす。破壊的な自然災害の下地を作るとも見られている。

世界経済に与える損失は計り知れず、科学者らによれば1970年以降10年ごとに少なくとも4倍ずつ膨れ上がっているという。

外来種のオオヒキガエル=オーストラリア・ダーウィン南部

しかも当該の数字は「途方もない過小評価で、氷山の一角に過ぎない」と、生態学者のヘレン・ロイ氏は強調する。同氏は国連の関与する「生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」がまとめた今回の報告書の共著者を務める。

何らかの介入により外来種の拡大と影響を食い止めなければ、2050年の侵略的外来種の総数は05年時点より3割以上増えるという。ロイ氏は気候変動の悪化や土地と海洋の使用状況の変化を受け、外来種のもたらす脅威も一段と深刻化するとの見方を示唆した。

外来種とは、人間の活動を通じて新たな地域に移動した動植物その他の有機体を指す。これらの外来種が侵略的な性質を帯びる場合、新たな地域では在来の生物多様性や生態系、人間の生活様式に負の影響が及ぶことになる。

数多くの事例の中にはアフリカの湖や河川をホテイアオイが埋め尽くす、ミノカサゴがカリブ海の漁場に影響を与える、アフリカマイマイがインド洋に浮かぶクリスマス島の村で大発生するなどのケースが含まれる。

この他グアム島では、ミナミオオガシラと呼ばれるヘビが島内に生息する鳥類の個体全てを消滅させた。北米の五大湖でも、カワホトトギスガイが短期間に大繁殖する事態が起きている。

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