「ソーラーツリー」でEVに充電、英スタートアップが開発中

英国で太陽光パネルを備えたソーラーツリーが登場するかもしれない/SolarBotanic Trees Ltd

2023.07.29 Sat posted at 20:30 JST

(CNN) 英国で、太陽光パネルのキャノピー(林冠)を備えた金属製の木が、近々駐車場やショッピングモールに設置されるかもしれない。  

このソーラーツリーは、太陽光発電を行うナノスケールの「葉」を通じて太陽のエネルギーを吸収し、そのエネルギーを木の幹に設置されたバッテリーに蓄えることができる。英国のスタートアップ企業ソーラーボタニック・ツリーズが、電気自動車(EV)の充電用の電源として考案した。

同社は最近、実物の半分の大きさのプロトタイプを完成させた。現在、フルサイズ版の開発・試験を目指しており、それらを終えた後、今年末に商業生産を開始する予定だ。

現在、英国では電気自動車用の充電インフラが急速に拡大している。電気自動車向けマッピングサービス企業ザップマップによると、2023年4月末までに4万カ所以上の公共の充電ポイントが設置されており、昨年から37%も増加しているという。

それでも需要に追いついていない状況で、英国の気候変動委員会(CCC)は、増加しつつある電気自動車をサポートするには、32年までに32万5000カ所の充電ポイントが必要になると予測している。

ソーラーボタニック・ツリーズの最高経営責任者(CEO)、クリス・シェリー氏によると、同社はすでに、電気自動車用充電インフラのサプライヤー(供給業者)であるロー・チャージング・グループから200本のツリーを受注したという。同社にとって、これが初めての受注だ。

ロー・チャージング・グループは、英国と欧州全体で電気自動車用充電ステーションのネットワークを展開しており、その一部としてこのソーラーツリーを導入する計画だ。

ソーラーボタニック・ツリーズはツリーを供給するため、ロー・チャージング・グループと提携している

シェリー氏によると、太陽光発電カーポートはすでに多くの企業が提供しているという。これらは太陽光パネルが駐車スペースを覆うように設置され、外見は太陽光パネルが上に載ったバスシェルター(屋根付きのバス待合所)のように見えるが、美学的に満足できるソリューションが不足している、とシェリー氏は言う。

その点、ソーラーボタニック・ツリーズのソーラーツリーは、その形がシンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイや、最近では20年に開催されたドバイ国際博覧会のサステナビリティー(持続可能性)パビリオンで注目を集め、美学的にも十分満足してもらえるとシェリー氏は主張する。

また高さ4.5メートルのソーラーツリーは、ドバイ国際博覧会のエネルギーツリーよりも空間効率が高いため、さまざまな公共の場に設置しやすい。

このドーム型のソーラーツリーは、日陰を提供するだけでなく、環境への取り組みをアピールするために高級感があり、目に見える製品を求めている高級ホテル、ショッピングモール、企業の本社、ビジネスパークには魅力ある商品だ、とシェリー氏は語る。

充電する

ソーラーボタニック・ツリーズのソーラーツリーの価格は1万8000ポンドから2万5000ポンドになると見られ、従来の太陽光パネルを使った電源に比べるとかなり高額だ。

発電容量は5キロワットで、低炭素ソリューションに特化した英国の非営利組織、省エネトラスト(EST)によると、5キロワットは標準的な充電ポイントの典型的な発電容量だという。しかし、この出力だと、50キロワットのバッテリーを20%から80%まで充電するのに約7時間かかる。

2020年に開催されたドバイ国際博覧会では、巨大なソーラーツリーが発電に使われた

ソーラーボタニック・ツリーズは、より小型の廉価版ツリーの設計も予定している。廉価版の発電容量は3.2キロワットで、シェリー氏によると、価格は1万ポンドから1万5000ポンドの間になる見込みだという。

この廉価モデルは、大学のキャンパス、ショッピングモール、町の中心部などに適しており、スマートフォンやノートパソコンの充電からLED照明や電子広告まで、さまざまな用途に利用可能だ。

各ツリーは、人工知能(AI)によるエネルギー貯蔵・電力管理システムを搭載しており、複数のツリーを接続してローカルなマイクログリッドを形成したり、ツリーを全国の送電網に接続することも可能で、それによりツリーが作り出した余剰エネルギーを主電源に戻すことができる。

また夜間や日照の少ない冬の日でも、ツリーは送電網から電力を取り込むことにより、充電を継続できる。

しかしソーラーボタニック・ツリーズは、送電網への依存を減らすために、ツリーの幹にバッテリー貯蔵システムを組み込む計画を立てている。これにより昼間の余剰エネルギーを蓄えておき、夜間に使用することができる。

ソーラーボタニック・ツリーズはすでに34万ポンドを調達しており、実物大のプロトタイプの試験を行った後に資金調達ラウンドを開始する予定だ。シェリー氏は、25年までに少なくとも年間1000本のツリーを生産したい考えだ。

シェリー氏によると、ソーラーボタニック・ツリーズは、まず英国に最初のツリーを建設し、その後欧州や北米に拡大していく計画だという。

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