映画業界復活の兆しか、「バーベンハイマー」封切りで期待高まる

「オッペンハイマー」と「バービー」の同日公開で、米映画業界が俄に活気づいている/Mark Makela/Getty Images

2023.07.25 Tue posted at 19:25 JST

ロンドン(CNN) 今夏の大ヒット映画「バービー」と「オッペンハイマー」を追い風に、苦境の映画業界が活気づいている。新型コロナウイルス禍で映画館が相次ぎ閉鎖に追い込まれてから3年を経て、消費者の映画熱が戻ってきたのかもしれないと期待する声が上がっている。

ボックスオフィス・ドット・コムが「バービー」の製作会社ワーナー・ブラザースと「オッペンハイマー」を手掛けたユニバーサル・スタジオのデータを引用して伝えたところによると、両作品の公開初週の週末興行収入は計5億1100万ドル(約720億円)に上った。

金額でリードしたのは「バービー」で、世界興収は3億3700万ドル。これに対してオッペンハイマーは1億7400万ドルだった。ピンク一色に染められた映画版バービーは今年これまでの公開初週の週末興収で最高の成績を収め、女性監督のオープニング興収としても歴代1位となった。

欧州最大の民間映画館運営会社であるビュー・インターナショナルのティモシー・リチャーズ最高経営責任者(CEO)は23日の声明で、週末のチケット売り上げはここ4年間で最多を記録したと説明した。

入場者数でも2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」以来の数字だという。

「バービー」鑑賞前に「オッペンハイマー」のポスターの前で自撮りする女性たち

グレタ・ガーウィグ監督による「バービー」はコメディーあり自分探しありの内容で、バービー人形が意味や重要性を求めて現実世界の性差別主義と対決する様子を描く。

「オッペンハイマー」はこれ以上ないほど対照的な内容だ。クリストファー・ノーラン監督の同映画は米国人物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの幼少期の神童ぶりからマンハッタン・プロジェクトの責任者として原爆開発を指揮するまでの道のりを描く。

意外な組み合わせだが、それがかえって両作品への関心をかき立てているようだ。世界最大の映画館チェーンAMCは先週、6万人が同一日に両作品のチケットを購入したと明らかにした。

チケット販売の低迷やパンデミック開始以降に相次ぐ恒久閉鎖で打撃を受けている映画館にとっては、「バーベンハイマー(バービーとオッペンハイマーを組み合わせた造語)」はうってつけの処方箋(しょほうせん)かもしれない。

ただ、両作品の成功が映画業界の持続的な復興につながるかは未知数だ。DC映画「ザ・フラッシュ」やディズニー映画「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」のような今夏の大作映画は期待を裏切る結果になっているほか、報酬や労働環境をめぐる俳優や脚本家のストライキで大半の映画の製作は一時中断している状況だ。

新型コロナ禍による経済的な打撃は極めて大きく、世界第2の映画館チェーンでリーガル・シネマズを傘下に持つシネワールドは2020年~21年に計33億ドルの損失を計上した後、昨年9月に破産を申請した。シネワールドはこれまでに、米国内にあるリーガル・シネマズの映画館51カ所を閉鎖している。

ハリウッドを席巻、「バーベンハイマー現象」とは

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