CNN主催のペンス氏の対話集会、6つのポイント

米アイオワ州デモインで開かれたCNN主催の対話集会に参加するペンス氏(左)/Will Lanzoni/CNN

2023.06.08 Thu posted at 18:46 JST

(CNN) 米国のペンス前副大統領は7日夜、CNNがアイオワ州デモインで開催した対話集会に参加した。かつて上司だったトランプ前大統領との間に一連の政策の違いがあることを明確にする一方、フロリダ州のデサンティス知事をはじめとする共和党の大統領選候補者らを牽制(けんせい)する発言も見られた。

集会の数時間前、ペンス氏は2024年大統領選への出馬を正式に表明した。集会では移民政策や給付金の支出、米国によるウクライナ支援などの問題でトランプ氏と相反する見解を示した。

ペンス氏は移民の家族を国境で引き離す政策について、復活させるつもりはないと明言。この政策に対しては批判する声が大きいが、トランプ氏は先月のCNN主催の対話集会で復活も辞さない考えを明らかにしていた。

ペンス氏はまた、他の共和党の候補者が社会保障の変更を論点に挙げないのは間違いだと指摘。会場の聴衆に向け、本気で政府支出を削減するなら、給付金プログラムの変更は避けられないと訴えた。

さらにトランプ氏とは過去について意見が違うだけでなく、共和党に関して異なる展望を抱いていると強調。24年大統領選の本選では共和党指名の候補者を支持すると約束する一方、トランプ氏が予備選を勝ち抜くとは考えていないと明かした。

ペンス氏の対話集会での主なポイントは以下の通り。

司法省のトランプ氏起訴には反対

ペンス氏は司法省に対し、トランプ氏を起訴しないよう強く要求。そのような起訴は米国内の分断に拍車をかけ、「ひどいメッセージをより広い世界に発信することになる」と述べた。

「何人も法に優越はしない」と明言しつつ、ペンス氏は司法省がトランプ氏による機密文書の取り扱いミスの可能性を捜査する上で起訴に踏み切らずに解決することは可能だとの認識を示した。同省は先週、ペンス氏の弁護士らに対し、同氏の自宅から機密文書が見つかった問題に関して起訴が行われることはないと通告した。

ただペンス氏の場合は直ちに米国立公文書館と連邦捜査局(FBI)に連絡し、文書を返還したのに対し、トランプ氏は自身の機密資料の引き渡しを拒み、昨年5月に文書を巡って召喚状が出てからも全ての機密文書を返還してはいなかった。

CNNは7日、司法省がトランプ氏に対し、機密文書の不適切な処理疑惑を巡る連邦捜査の対象になっていると通告したと報じた。

ペンス氏はFBIによるトランプ氏の自宅での機密文書捜索についても、より良い手段が数多くあったと異議を唱えた。前大統領の自宅が捜索対象となる事例は過去になかった。

ウクライナでの戦争に関する問題では、トランプ氏やデサンティス氏の認識を厳しく批判

トランプ氏のプーチン氏評を攻撃

ここまで、ペンス氏の最も辛辣(しんらつ)なトランプ氏に対する批判は、米国がウクライナへの支援で果たす役割に関する内容となっている。ウクライナはロシアによる侵攻の撃退を図っている。

米国はウクライナへの支援を加速するべきだと主張した後、ペンス氏はトランプ氏が昨年2月のラジオ番組のインタビューでウクライナ侵攻に絡めてロシアのプーチン大統領を「天才」と呼んだことに言及。「私には天才と戦争犯罪人の区別がつく。そしてウクライナでの戦争でどちらが勝利しなくてはならないかもわかっている」と述べた。

続けて「勝利すべきは自分たちの自由のために戦う人々だ。ウクライナで、自分たちの国家主権を取り戻すために戦っている人々だ」と強調。米国はウクライナ国民に戦う能力を与える必要があると語った。

また当該の戦争を「領土紛争」と形容したデサンティス氏も遠回しに攻撃。状況への認識が甘いと断じた。

親の権利を擁護も、子どもがトランスジェンダーの場合は別

ペンス氏は再三、親が持つ権利を擁護していると強調した。しかし子どもが性転換しようとしている状況下では、同様の判断を適用するべきではないとの考えを示した。

18歳未満に対してはいかなる性転換手術も禁止する州法を強く支持すると述べたペンス氏は、たとえ性転換するという子どもの判断を親が支持している場合でも、これを親の権利として認めるわけにはいかないと主張した。

「大人はいくらでも自分の望むように生きればいい」「しかし子どもの場合は、我々が過激なジェンダー・イデオロギーから保護しなくてはならない。化学的なものであれ外科手術的なものであれ18歳未満に対する性転換にはノーと言わなければ」(ペンス氏)

共和党の大統領選候補者は、ペンス氏が言うところの「過激なジェンダー・イデオロギー」を軒並み非難する。この用語は定義上、若年層を説得して性転換させようとする人々の運動が存在するという、誤った内容を示唆する言葉となっている。

子どもの性転換や人工妊娠中絶には明確に反対する立場を強調した

人工妊娠中絶に対する立場は明確

長年人工妊娠中絶に強く反対してきたペンス氏は、7日にもその立場から外れるつもりがないことを明確にした。

昨年最高裁が中絶の権利を認める「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下したことに言及すると、当該の判事のうち3人は自身が副大統領を務めた政権が任命したと指摘。「これ以上誇らしいことはない」と述べた。

連邦政府として中絶手術を禁止することについては、レイプや近親相姦(そうかん)、母体の生命に危険がある場合などの例外措置を支持するとした。

一方でこの問題に関して、自身の側が「米国民の心をつかむまでには長い道のりが存在している」ことも認めた。同調者らに対しては「原則と思いやり」の両方を示すよう促した。

トランプ政権時代の刑事司法制度改革からは「一歩退く」

ペンス氏は、トランプ政権時代の重要な刑事司法制度改革からは「一歩退く」考えを示した。

ファースト・ステップ法と呼ばれるこの法律の下で、連邦刑務所の受刑者は早期に釈放された。大半が麻薬犯罪や武器に絡む罪で服役していた受刑者で、素行の良さや社会復帰プログラムへの参加が釈放理由だった。特定の麻薬犯罪者に対して最低限義務付けられていた量刑も緩和された。

ペンス氏は対話集会の司会者に向けて、「凶悪犯罪には真剣に、厳しく臨む必要がある。都市や州に資源を投入し、法と秩序を街に取り戻さなくてはならない。私が大統領になればそうなると約束する」と語った。

トランプ氏への批判は続く

ペンス氏は、1年以上にわたって言及してきたトランプ氏に対する批判内容をここでも繰り返した。つまり20年大統領選で、トランプ氏が一部の州の選挙人投票の結果を覆すよう自分に求めてきたのは誤りだったという主張だ。21年1月6日、ペンス氏は儀式的な役割として、連邦議会での選挙人票の集計を取り仕切っていた。

その後、トランプ氏が意見を変えるのを期待していたというペンス氏だが、当時一部の州が選挙の手順を不適切に変更していたとの見方には同意すると述べた。こうした変更は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の中で行われていたとみられる。

「それでも最終的には、共和党は憲法を守る党でなければならないと考える」(ペンス氏)

連邦議会議事堂襲撃事件に関与した暴徒たちについても、トランプ氏とは異なる見解を示した。トランプ氏は、刑事訴追や有罪判決を受けたこれらの暴徒らの多くについて、「極めて不当に」扱われたと発言。自分なら恩赦を検討すると述べていた。

これに対しペンス氏は、警官を襲撃し、議事堂を破壊した人物らに恩赦を与えるつもりはないと明言。再発を防ぐためにも、法に基づく厳しい措置が必要だとの認識を示唆した。

ペンス氏、トランプ氏の機密文書問題について語る CNN対話集会

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