ウクライナ、ロシア国内で破壊工作員養成か CNN EXCLUSIVE

クレムリンのドーム付近で、飛行物体が強い光を発して爆発する様子を捉えた画像/Ostorozhno Novosti/Reuters

2023.06.06 Tue posted at 12:32 JST

ワシントン(CNN) ウクライナが養成した工作員と同調者のネットワークが、ロシア国内にある標的に対して破壊工作を行っているとの見方が浮上した。ウクライナはこの工作員らに、攻撃を実施するためのドローン(無人機)も提供しているという。この問題に関する米国の諜報(ちょうほう)に詳しい多くの人々がCNNに明らかにした。

米国の当局者らは、ロシア国内にいるこれらの親ウクライナの工作員が先月初めにクレムリン(ロシア大統領府)を狙ったドローン攻撃を行ったとみている。攻撃に使用したドローンはロシア国内で飛ばされており、ウクライナからモスクワへ飛行したものではなかった。

モスクワ近郊の住宅街やロシア南部の製油所を標的にしたこの数日のドローン攻撃については、同じくロシア国内で飛ばされたものなのか、また当該の親ウクライナ派の工作員ネットワークが実行しているのかどうか判然としない。

しかし米当局者らは、ウクライナが工作員の組織を複数ロシア国内で展開していると考えている。これらの組織には、ウクライナへの同調者とこの種の戦争に熟達した工作員が混在しているという。ウクライナは組織のメンバーに対し、自国製のドローンを供給しているとみられる。

米当局者2人はCNNの取材に答え、いずれのドローン攻撃においても米国が供与したドローンが使用された証拠はないと述べた。

ウクライナがどのようにして敵陣の向こうへドローンを持ち込めたのかについて、当局者らは結論を得られていない。ただ情報筋のうち2人はCNNに対し、ウクライナが既に密かな供給ルートを構築し、それを盛んに使用してドローンもしくはドローンの部品をロシア国内へ送っていると分析。これらの部品はロシア入りした後で組み立てられるとした。

欧州の情報当局者1人はロシアとウクライナの国境について、広大であり管理が極めて困難だと指摘する。これがドローンの密かな持ち込みに適した状況を作り出しているという。

ドローンや輸送ルートを管轄する主体を巡り、米当局者らはウクライナの情報機関の一部が関与しているとの見方を示す。これらの情報機関や保安要員の行動はウクライナのゼレンスキー大統領が発する全般的な指針の下で許可されるが、全ての作戦行動に同大統領の承認が必要なわけではないという。情報筋のうち2人が明らかにした。

モスクワでのドローン攻撃の報告を受け、集合住宅の損傷を調べる専門家

CNNの取材に答えたウクライナ保安庁トップの広報担当者は、謎の爆発やドローン攻撃が今後もロシア国内で続くことを示唆した。

原因不明の火災並びに爆発は、ロシア国内で昨年から頻発している。狙われたのは石油や燃料の集積地、鉄道、軍の入隊事務所、倉庫、パイプラインだ。しかし当局者らは、クレムリンへの攻撃を皮切りに、この種のロシア国内での攻撃がここ数週間で増加傾向にあると指摘する。

これは見たところウクライナによる取り組みの「数カ月間の集大成」であり、インフラに対するこうした破壊工作を仕掛ける活動が頂点に達したことを示すように思われると、諜報活動に詳しい情報筋の一人は語った。

「今や数カ月にわたり、相当に一貫した後押しがウクライナ国内にいる一部の人物らによってなされている。これは攻撃の度合いを強めることを念頭に置いている。上層レベルにも一定の意向が存在しているのは間違いない。課題は常に、それを実行することができるかどうかだ」。当該の人物は、米国による諜報活動の機微を理由に匿名で述べた。

表向き、高位の米当局者らはロシア国内での攻撃を非難。戦争を激化させかねないとして警鐘を鳴らしている。しかしCNNとの私的な会話では、米国および西側諸国の当局者らはウクライナからの越境攻撃について、賢明な軍事戦略だと指摘。これによりロシアは資源を自国の領土の防衛に振り向ける可能性があるとしている。

大規模な反転攻勢の準備を進めるウクライナの当局者らも、内々ではロシア国内でのこうした攻撃の戦略的意義を認めているという。最近これらの当局者らと言葉を交わした米国の情報筋が明らかにした。

英国防省は最新報告の中で、「ロシア軍の司令官らが現状、深刻なジレンマに直面している」と分析。ロシア国内の国境地帯の防衛を強化するか、ウクライナの占領地域の前線を増強するかの選択を迫られていると主張した。

ウクライナ侵攻、ドローンの役割は

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