独警察、ピンクフロイド創設メンバーを捜査 コンサートの風刺的演出でナチスの衣装着用

今月17日、ベルリンの会場でパフォーマンスを披露するロジャー・ウォーターズさん/Frank Hoensch/Redferns/Getty Images

2023.05.27 Sat posted at 14:30 JST

(CNN) ドイツの警察は27日までに、英国のロックバンド、ピンクフロイドの創設メンバーとして知られるロジャー・ウォーターズさんに対する犯罪捜査を開始した。ウォーターズさんが先週、ベルリンで開催したコンサート2公演でナチス・ドイツの制服に似た衣装を着て登場したためとしている。

ウォーターズさんが問題の衣装を着て現れたのは、今月17、18日のコンサートでピンクフロイドの1979年発表のコンセプトアルバム、「ザ・ウォール」の楽曲を演奏した際のこと。同アルバムの中で主人公に設定されている人物は、自らがファシストの独裁者だという幻覚を見る。ウォーターズさんはこの風刺的なパフォーマンスを自身のソロコンサートの一部として、少なくとも30年間取り入れている。90年にベルリンで行った有名なライブでのパフォーマンスもその一つだ。

ウォーターズさんのパフォーマンスを受けてドイツ政府が犯罪捜査を立ち上げるのは今回が初めて。

ベルリン警察の広報担当はCNNの取材に答え、当該の2公演のパフォーマンスに絡み、ウォーターズさんに対して扇動の容疑で捜査を行っていることを確認した。市民から寄せられた動画や画像が捉えた当時のウォーターズさんの外見は、憎悪を扇動する違反の基準を満たしているという。

またベルリン警察はCNNに宛てた声明で、当該の衣装の文脈がナチス政権の暴力と独裁的な支配を容認、美化、正当化しかねないものだとの認識を示唆。犠牲者の尊厳の侵害にもつながるため、公共の平和を乱すことになると主張した。

SNSに投稿されたステージ衣装を理由に独警察がウォーターズさんに対する捜査を開始

ソーシャルメディアに投稿された公演の動画によると、パフォーマンス中のウォーターズさんは赤い腕章を着用。腕章にはハンマー2本が交差した図案が描かれている。これは上記のアルバム「ザ・ウォール」に登場する図案だが、ユダヤ人団体の名誉毀損(きそん)防止同盟によると、人種差別的な集団に採用されてもいるという。

ウォーターズさんは、自分が反ユダヤ主義者だとの見方を再三否定。20日にはフェイスブックに声明を投稿し、ミュンヘンでの公演時に反ナチスの活動家の墓地を訪れたと明かしていた。

一方でパレスチナ支援を念頭にイスラエルに対する投資撤収や制裁を呼び掛ける活動「BDS運動」を以前から支持しており、これを反ユダヤ的と認定した2019年の独連邦議会の決議を上記の声明で批判した。

ウォーターズさんは28日、フランクフルトでも公演を行う予定。現地のユダヤ人コミュニティーはこの公演に対する抗議活動を展開している。

今月6日のポッドキャスト番組のインタビューでウォーターズさんは、自身のパフォーマンスは許容範囲だとの見解を示し、誰であれナチスの制服を着て芝居や映画に出てはいけないとする考えは「馬鹿げている。当たり前だ」と語っていた。

司会者が「ナチスを支持するように着飾っているわけではない」、「痛烈な批評であり、極悪な人物を演じている」と指摘すると、「単なるパロディーだ」とウォーターズさんは答えた。

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