ペルー治安部隊がデモ参加者や通行人を「処刑」、若者や子ども犠牲に アムネスティ報告

アムネスティ・インターナショナルの代表者との記者会見に出席した遺族=2月16日、ペルー・リマ/Cris Bouroncle/AFP/Getty Images

2023.05.26 Fri posted at 15:28 JST

(CNN) 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、南米ペルーで2022年12月に始まった大規模デモについて、治安部隊によるデモ参加者の「処刑」や不当な殺傷力の行使が横行していたとする報告書をまとめた。

アムネスティはペルーのアヤクーチョ、アプリマク、プーノの3県で22年12月7日~23年2月9日にかけて死亡した25人について調査した。このデモでは民間人計49人が命を落とした。

犠牲者の多くは21歳未満で、調査の対象とした死者のうち6人は子どもだった。


抗議活動を行うデモ参加者=1月24日、ペルー・プーノ市/Juan Carlos Cisneros/AFP/Getty Images

ペルーで数週間にわたって続いた抗議デモは、昨年12月、ペドロ・カスティジョ前大統領の罷免(ひめん)が発端となり、生活状況や格差に対する根深い不満にあおられて全土に広がった。

南部の農村や先住民地域では特に激しい抗議運動が巻き起こった。先住民らはペルーのエリート層がカスティジョ氏を罷免することで、自分たちを再び排除しようとしているとみなした。

アムネスティによると、ペルー軍や国家警察は、法執行業務での使用が禁止されているペレットや銃弾といった殺傷兵器を不当に使用したとされる。

警備を行うペルー軍の兵士=2022年12月15日、ペルー中部アヤクーチョ

さらに、催涙弾など殺傷力の低い手段も過剰に使用され、不必要な状況で使われることもあったとしている。

ペルー政府は治安部隊が自衛のために行動したと説明していた。一方、アムネスティが収集した証拠によれば、死亡した25人は致命的な部位に傷を負っており、無差別ではなく意図的に撃たれたことを示していた。

いずれのケースでも、死亡した人が警官や兵士の生命を危険にさらしたことを裏付ける証拠は見つからなかったと報告書は指摘。その場にいただけの人や、通りかかっただけの人が死亡したり負傷したりしたケースも複数あったとしている。

アムネスティは、調査の対象とした死者25人のうち、少なくとも20人は裁判なしの処刑だったとみなしている。犠牲者のうち15人は21歳未満だった。

アムネスティの検視報告書によると、抗議デモで確認された初の死者とされる15歳の少年は、アプリマクの空港前でデモを見ていたところを背後から撃たれて死亡した。

別の15歳の少年はその数日後の12月15日、アヤクーチョで道路を横断していたところを銃撃された。少年は空港近くの墓地で清掃の仕事をしていた。

CNNの取材に応じた少年の母親は24日、「彼らは罪のない人たちを殺している。息子には何の罪もなかった。道路を渡っていて撃たれた」と涙ながらに語り、「彼らは私たちをテロリストと呼んでいるが、それは真実ではない」と訴えた。

CNNは、この2人が死亡した状況の検証は行っていない。

外国記者団の取材にこたえるペルーのボルアルテ大統領=1月24日、ペルー・リマ

アムネスティは、アプリマク県で12月に頭部を撃たれて死亡した18歳のサッカー指導者にも言及した。

さらに、ペルー南部では人種的偏見に基づき抗議デモ参加者が攻撃されたと指摘。南部では治安部隊の暴力的な対応によって数十人が死亡したのに対し、同じようなデモが起きた首都リマの死者は1人だけだったとしている。

一方、ペルー政府の対応については、ディナ・ボルアルテ大統領や閣僚などが治安部隊の対応を賞賛していたと報告。「違法行為を裏付ける証拠がますます明らかになっていたにもかかわらず、一貫して法執行機関の行為を支持し、正当化した」と批判している。

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