温暖化で数十億人が過酷な気象条件下に 研究者らが警告

インドはこのところ熱波に襲われている/Kabir Jhangiani/NurPhoto/Getty Images

2023.05.25 Thu posted at 19:39 JST

(CNN) 地球温暖化がこのまま進めば、人類の繁栄に適した気象条件の範囲から数十億人が外れ、危険な暑さにさらされることになるとの新たな研究結果が報告された。

英エクセター大学のティモシー・レントン教授と中国・南京大学のシュ・チー教授の率いる研究チームが、科学誌ネイチャー・サステイナビリティーに論文を発表した。

チームはこの中で、世界の平均気温が現時点で予想されている通り、今世紀末に産業革命前から2.7度上昇した場合の人間への影響を予測した。

気候変動と人口増加の両方を考慮すると、2030年までに世界で20億人、90年までには37億人が、人類の繁栄に適した「気候ニッチ」の外に追いやられ、年平均気温が29度以上という過酷な暑さにさらされるという。

こうした人々は世界人口の3分の1を占めることになり、地球上で人間の住める場所が変動して、人口分布も一変する可能性があると、レントン教授は指摘する。

研究チームが世界の人口分布と年平均気温の関係を示したデータによると、これまで最も多くの人口が集中してきたのは年平均気温が13度の地域で、27度前後にもうひとつのピークがある。

水を飲む農業者=20日、マレーシア・セランゴール州

現時点で年平均気温が29度以上の危険な暑さにさらされている住民は世界人口の1%に満たないが、すでに気候変動によって6億人あまりが「気候ニッチ」の外に追いやられた。

チー教授によれば、その大半は13度の冷涼なピークの近辺に住んでいた地域の住民で、現在は二つのピークの「中間領域」にいる。危険な暑さではないが、これらの地域は乾燥が激しい傾向にあり、歴史的に人類の繁栄に適した気象条件から外れてきたという。

チームは、気温が2.7度上昇した場合に危険な暑さにさらされる国としてインド、ナイジェリア、インドネシア、フィリピン、パキスタンを挙げた。上昇幅が3.6~4.4度に達する最悪のシナリオでは、世界人口の半分が「気候ニッチ」から外れ、人類が存亡の危機に直面する恐れもあるという。

レントン教授によれば、温暖化が0.1度進むごとに、約1億4000万人が危険な暑さにさらされる。これまでの対応が遅れたため、気候変動を必要なレベルまで抑えるには、温室効果ガス排出量の削減や世界経済の脱炭素化のスピードを5倍程度に上げる必要があるという。

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