(CNN) 強力なサイクロンの直撃を14日に受けたミャンマーで、数百人に上る死者が出た恐れが浮上している。インド洋のベンガル湾で発達した当該のサイクロン「モカ」は、同国を襲った過去のサイクロンの中で最も勢力の強い部類。救助に携わるグループは、「大規模な人命の損失」に警告を発している。
モカの直撃を受けたミャンマー沿岸部では家屋が倒壊し、木々や電柱がなぎ倒されるなどの被害が出た。このため通信環境にも重大な影響が及んでいる。
サイクロン「モカ」によって破壊された建物の前を歩く男性=15日、ミャンマーのラカイン州シットウェ/Sai Aung Main/AFP/Getty Images
同国の影の政府は16日、サイクロンの被害で少なくとも400人が死亡したと発表。不特定の数の人々が依然として行方不明だとした。CNNはこの数字を独自に検証できていないが、これは軍事政権がテレビを通じて先に発表した数と大きく異なる。
軍事政権は公式の死者数を3人、負傷者数を13人としていた。
ただ複数の人々がCNNの取材に答えたところによると、イスラム教徒のロヒンギャの遺体は多くが「宗教上の慣習」に従い、既に埋葬されたという。
西部ラカイン州の州都シットウェに住む男性は、サイクロンの後、子どもや高齢者、妊婦の遺体が地面に横たわっているのを見て涙が出たと明かした。その上で、戦闘を逃れて難民生活を送るロヒンギャには家も食べ物も避難場所もないと強調。同様の災難がロヒンギャに対して繰り返し起きていると訴えた。
この男性は、8人の犠牲者のためにイスラム式の埋葬の祈祷(きとう)を行ったという。
軍事政権を率いる国軍のミンアウンフライン最高司令官はシットウェを視察して被害状況を確認。住民に支援を提供した。国営メディアが15日に報じた。
大半が貧困化、孤立化しているラカイン州は、近年政治的な暴力が広がる地域となっている。
国籍のないロヒンギャは過酷なミャンマー軍事政権の弾圧を逃れ、2017年以降100万人近くが隣国バングラデシュに逃れたが、ラカイン州には数十万人が残る。多くは難民キャンプで暮らし、当局の厳しい監視下に置かれている。
支援機関は、施設として脆弱(ぜいじゃく)なこれらの難民キャンプが今回のモカの直撃で最大の被害を受けたのではないかと危惧している。