受け継いだ伝統文化の良さを認識し、そこからより良い未来を想像する。独学で学んだ写真家兼ビジュアルアーティスト、アデ・オケラリンはそれを目標のひとつにしている。アーティスト名は「アシコ」――生まれ故郷ナイジェリアで話されている言語のひとつ、ヨルバ語で「時」「瞬間」を意味する。伝統的なヨルバ人の文化の要素を取り入れることは、これまでのアシコの創作活動で重要な点だった。アシコの作品を写真で見る
Àsìkò
写真家兼ミックスメディアアーティストの「アシコ」ことアデ・オケラリンは、ナイジェリアとイギリスから受け継いだ伝統の要素を並列することが多い。この作品はナイジェリア南西部のヨルバ人の神「オサニーン」。森、植物、薬などをつかさどる
Àsìkò
オケラリンはアーティストとしての自分の役目を、社会を左右する問題に関心を向け、対話を促すことだと考えている。「A Black Life Matters(仮訳:一つの黒人の命は大事)」と題したシリーズは米国のブラック・ライブズ・マター運動(BLM)に反応した作品で、複数のセルフポートレートを制作した。タイトルは「I Can't Breathe(息ができない)」(2020年)
Àsìkò
作品にはアフリカ伝統文化の経験で得た「感情的背景が幾重にも重っている」とオケラリン。「She is Adorned(仮訳:着飾る彼女)」シリーズでは、ヨルバ文化のイメージにデジタル処理したコラージュを盛り込み、伝統的な生地「アディレ」の上に重ねている。タイトルは「Constellations of Beauty(美しき星々)」(20年)
Àsìkò
エグングンの仮面姿を題材にした「Manifestations(仮訳:顕現)」シリーズ。仮面は祖先の象徴であり、祖先とのつながりでもある。タイトルは「Commune with the Ancestors(祖先と語らう)」(21年)
Àsìkò
オケラリンは生地に織り込まれた記号に着目し、被写体の身体上に記号を表示している。記号は女性が自由に表現できなかった時代、メッセージを伝える手段として用いられた。タイトルは「Oloba」(18年)
RAZIA NAQVI JUKES/Razia Naqvi-Jukes
オケラリンが現在力を入れているのが彫刻作品。最近も、舞台に人種平等をテーマにしたロンドンの屋外アートプロジェクト「World Re-imagined Initiative」の一環で地球儀を制作した