スナネコに迫る絶滅の危険、砂漠に生きる生態も明らかに

4年間にわたってスナネコを調査した結果が発表された/Gregory Breton

2023.05.03 Wed posted at 16:30 JST

(CNN) 野生のスナネコの子猫の写真が初めて撮影されたのは、わずか7年前だった。小さくてフワフワの猫たちの写真はインターネットで瞬く間に広まった。それまで砂漠にすむスナネコを見た人はほとんどなく、生態についても分からないことばかりだった。

しかしそうした状況は変わり始めている。今年3月、4年間にわたってスナネコを調査した結果が学術誌に発表された。記録されたデータの量はこれまでで最も多く、北アフリカと中東、アジア南西部と中部の砂漠に生息するスナネコが、過酷な環境でどうやって生き延びているのかが明らかになった。

スナネコはイエネコに比べて体はやや小さく、獲物の音を聞き分けるために耳は大きい。調査の結果、齧歯(げっし)類や、毒ヘビを含む爬虫(はちゅう)類を餌にしていることが分かった。

「一晩に数匹の(獲物を)食べてエネルギーを摂取しているが、水は全く飲まない」。論文共同筆者で野生ネコ類の保護団体パンテラ・フランス代表のグレゴリー・ブレトン氏はそう語り、「獲物の血液から液体と水分を摂取している」と指摘した。

スナネコの毛は砂と同じ色をしていることから砂漠環境でカムフラージュできる。排せつ物をうずめ、食べた獲物は残さず、砂の上の足跡はすぐにかき消される。

その見えにくさがこれまで発見されなかった理由の一つであることは間違いないとブレトン氏は言う。学術記録に初めて登場したのは1858年(フランス兵がサハラ北部で目撃)だが、研究論文は数えるほどしかなく、多くはデータに乏しかった。

そうした謎の多さで好奇心に駆られたブレトン氏は、2013年に調査を開始。この種に対する理解が深まれば、保護の取り組みに役立つ可能性もあると言い添えた。

スナネコはイエネコに比べて体はやや小さく、獲物の音を聞き分けるために耳は大きい

調査はパンテラ・フランスとドイツのケルン動物園、モロッコのラバト動物園が連携して、気温50度に達することもあるモロッコ南部の砂漠で実施。学者や獣医師を含む5人のチームがスナネコ22匹を捕獲してVHF無線搭載の首輪を装着し、15~19年にかけて追跡調査した。

この調査の結果、従来の想定の多くが覆されたとブレトン氏は話す。

その一つスナネコの生息範囲だった。それまでの推定では、スナネコの移動範囲は最大で50平方キロと考えられていた。しかし今回の研究の結果、移動範囲はそれを大幅に上回ることが判明。1匹は1758平方キロもの範囲をわずか半年あまりで移動していた。スナネコの移動距離は、クロアシネコやリビアヤマネコを含むこの大きさのどのネコ類よりも大きいと論文では指摘している。実際のところ、スナネコの移動距離はライオンやトラ、ヒョウなどの大型ネコ類にも対抗できるとブレトン氏は話す。

スナネコが降雨や環境の変化に応じて一つの巣から別の巣へと移っている可能性があることも分かった。この仮説を実証するためにはさらなる調査が必要だが、そうした遊牧的な生態が確認された野生のネコ類はほかになく、確認されれば「画期的」だとブレトン氏は言う。

スナネコは現在、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種分類で「軽度懸念」に分類されている。しかし生息範囲の大きさに関して新たに判明した情報から判断すると、個体数はこれまでの推定よりも少ない可能性があり、研究チームはIUCNに分類の再考を促している。

スナネコはこれまで考えられていたよりも大きな絶滅の危機にさらされている可能性があるとブレトン氏は指摘。牧羊犬に殺されたり、野生種にとって危険な病気をイエネコが持っていたり、違法なペット取引のために捕獲されたりする危険もあるとしている。

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