プロポーカー選手、エアタグで紛失荷物を追跡 生放送で航空会社批判

オドワイヤー氏の追跡装置では、手荷物はヒースロー空港にあると表示されていた/Aris Suwanmalee/Adobe Stock

2023.04.15 Sat posted at 18:00 JST

(CNN) 飛行機に乗る際に預けた手荷物が、目的地の空港のベルトコンベアに出てこない時にどうするか。

かつては心の中で悲鳴を上げた後、航空会社が荷物を発見し送り届けてくれることを期待して、航空会社に紛失を報告するくらいしかできなかった。

しかし、ここ数年は、乗客が自分の荷物を追跡して、その所在を航空会社に知らせることにより、荷物の捜索に積極的に関与するケースが増えている。

ここで質問。預けた荷物がベルトコンベアに出てこなかったが、その荷物がロンドン・ヒースロー空港の第4ターミナルにあることが分かっている場合はどうなるか。

スティーブ・オドワイヤー氏の場合、その答えは「全く何も起こらなかった」

紛失したオドワイヤー氏の手荷物は、オドワイヤー氏がパナマに向かう途中、ヒースロー空港で乗り継ぎを行った1月21日以来、同空港にあった。

荷物にGPS追跡装置(アップル・エアタグ)を入れておいたおかげで、オドワイヤー氏は荷物が13日前からヒースロー空港にあるという証拠を握っていた。

ただ残念なことに、オドワイヤー氏が航空券を予約したドイツのルフトハンザ航空は、その13日間、オドワイヤー氏の荷物を取り戻すための努力はしていなかったようだ。

切羽詰まったオドワイヤー氏は、全く関係のないテレビの生放送で、預けた荷物を返却しなかったルフトハンザを痛烈に批判した。

シンプルな旅のはずが・・・

オドワイヤー氏は、プロのポーカープレーヤーで、2016年には世界のポーカープレーヤーをランク付けするグローバル・ポーカー・インデックス(GPI)で1位にランクされ、現在、世界の歴代ポーカー賞金ランキングで14位に付けている。

アイルランド在住のオドワイヤー氏は1月21日、恋人のエリザベス・ウェルズさんとともに、ポーカーのトーナメントが開催されるバハマに向かっていた。

オドワイヤー氏らはルフトハンザ機でフランクフルトに飛んだ。それが問題の始まりだった

航空券はルフトハンザ航空で購入した。2人はまず、ルフトハンザ機でダブリンからフランクフルトに飛び、その後エア・カナダとルフトハンザのコードシェア便でフランクフルトからカナダのモントリオールに行き、そしてモントリオールからバハマの首都ナッソーに向かう予定だった。

コードシェア便のおかげで旅は非常にシンプルで、2人は二つの手荷物(1人ひとつ)をダブリンの空港で預け、ナッソーで受け取るはずだった。

しかし、フランクフルトでモントリオール行きの便に搭乗する際、オドワイヤー氏のカナダ入国ビザの有効期限が切れていることが判明し、搭乗を拒否されてしまった。

そこで2人は、その場で新しい航空券を購入し、今回も航空会社はルフトハンザを選んだ。まずルフトハンザ機でフランクフルトからロンドン・ヒースロー空港に飛び、翌日、英国のヴァージン・アトランティック航空の直行便でナッソーに向かうことになった。

ルフトハンザの発券カウンターで新たな航空券を購入する際、オドワイヤー氏はクレームタグ(手荷物預かり証)を提示し、新たに予約した便に荷物を転送するよう要請。カウンターの職員も何度か電話をかけ、荷物が新しい便に転送されることを確認したという。

2人は、その晩ヒースローで宿泊するホテルを予約し、ロンドン行きの便の搭乗ゲートに向かった。

しかしそこで搭乗係員から、2人が搭乗する便への荷物の転送が間に合わない恐れがあり、もしヒースロー空港の手荷物受取所で荷物が出てこなかったら、その旨をルフトハンザに報告するよう告げられたという。

案の定、2人の荷物はヒースロー空港のベルトコンベアに流れてこなかった。そこで2人はルフトハンザに手荷物紛失の申し立てを行ったが、その時はさほど心配はしていなかったという。

ルフトハンザの職員から荷物は間違いなくナッソーに転送されると言われたことに加え、荷物に入れたエアタグが機能していることが確認できたためだ。

またオドワイヤー氏は、過去15年間、ポーカーのトーナメントに出場するために頻繁に飛行機で移動し、手荷物の紛失も何度も経験したが、それまで荷物の回収で苦労したことは一度もなかったという。2人は空港で洗面用具を購入し、宿泊先のホテルに向かった。

「今しばらく辛抱を」

翌朝、2人はヒースロー空港でナッソー行きの便に乗り込んだ。この時、荷物に仕込んだエアタグの位置がまだヒースロー空港であることを確認したが、2人がナッソーに到着した時にもエアタグの位置はヒースロー空港のままだった。

そこでルフトハンザに電話をすると、荷物は確保しており、すぐにナッソーに転送すると言われたという。

それから13日間、2人は毎日ルフトハンザに電話をかけたが、2人のもとに荷物は届かなかった。

ルフトハンザに電話をすると、ある時はまだ荷物を捜索中と言われ、またある時はすでに荷物を発見し、転送の準備が整ったと言われたという。

オドワイヤー氏はルフトハンザに、荷物の一つにエアタグが入っており、ヒースロー空港の第4ターミナルにあることが分かっているので、所在地を示すスクリーンショットを送りたいと伝えたが、それを航空会社に送信する手段はないと言われたという。

オドワイヤー氏は、電話で応対したルフトハンザの職員から、荷物の転送に向け全力を尽くしているので、今しばらく待つように言われたが、彼らはただマニュアルを読み上げているだけで、相手になるべく早く電話を切らせようとしているのが見え見えだったという。

オドワイヤー氏はポーカーの試合中、テレビで航空会社批判を行った

最後の手段

怒ったオドワイヤー氏は、ルフトハンザの注意を自分に向けさせるためにある行動に出た。

ポーカーのトーナメントで、オドワイヤー氏の一挙手一投足を追うテレビカメラに向かってルフトハンザに対する怒りをぶちまけ、荷物を返すよう要求したのだ。

オドワイヤー氏はチップをシャッフルしながらカメラをまっすぐ見つめ、「ルフトハンザ機に乗ってはいけない。地球上で最悪の航空会社だ」と述べた。

オドワイヤー氏は、テレビカメラに向かって怒りを爆発させれば、ルフトハンザ社に対して「より大きな影響力」を持てると考えていた。しかし、ポーカー業界では波紋が広がったものの、その後も荷物には動きがなかった。

「未知の世界」

オドワイヤー氏は、今回のルフトハンザの対応について「間違いなくこれまでの人生で最悪のカスタマーサービス」と批判した。その理由は、そもそもルフトハンザが荷物を紛失したからではなく、職員の対応に切迫感が欠如していたからだという。

オドワイヤー氏は、預けた手荷物が到着した空港で出てこなかった経験はこれまで少なくとも10回はあるが、航空会社はいつも速やかに荷物を返却し、返却に1日か2日以上かかった時には何度も連絡が来るなど、頼りになったという。

2017年にエチオピア航空が2人の手荷物を紛失した時には、東京の空港でエチオピア航空の職員から直接謝罪を受け、さらに手荷物の紛失に伴い2人が支出した費用を現金で受け取ったという。

ルフトハンザの対応とは大違いだ。「まるで未知の世界にいるような気分だ」とオドワイヤー氏は言う。

オドワイヤー氏は、テレビの生放送でルフトハンザを批判したことを後悔していないという。

「本来であれば、朝の時間はおいしい朝食をとったり、運動のために泳いだり、十分な睡眠を取るなど、トーナメントへの準備に充てるはずだった。しかし、その貴重な時間をルフトハンザとの電話に充てることになり、その上、何の成果も得られなかった。この11日間、膨大な心的資源を浪費した」(オドワイヤー氏)

ルフトハンザの広報担当者はCNNに対し、今回のオドワイヤー氏の体験をカスタマーサービスに伝えると述べ、さらに「この問題を処理」した上で、オドワイヤー氏に直接連絡を取ることを約束した。

またルフトハンザは「今回の対応において、我々の品質基準を完全に満たせなかったことは遺憾だ」と付け加えた。

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