3000年前の毛髪から向精神薬使用の痕跡 欧州最古の事例 スペイン

3000年前に埋葬された欧州の人物の毛髪から向精神薬の使用を示す痕跡が検出された/ASOME-Universitat Autònoma de Barcelona

2023.04.13 Thu posted at 14:30 JST

(CNN) スペインの科学者らがこのほど、青銅器時代の欧州に住んでいた人々について、向精神薬を使用していたことを示す直接的な証拠を発見した。太古の儀式の一部に使われていた可能性がある。

植物に由来し、知覚に影響を与え、譫妄(せんもう)や多幸感を引き起こすことで知られるアルカロイドの痕跡が、およそ3000年前に遡(さかのぼ)る人間の毛髪の房に残存していた。研究者らはこの毛髪を他の葬儀用の遺物と共に、埋葬に使用される洞窟の中で発見した。洞窟はスペインの東の沖合、地中海に浮かぶバレアレス諸島に属するメノルカ島にある。

化学分析の結果、毛髪からは興奮剤のエフェドリンの他、アトロピンとスコポラミンも検出された。アトロピンとスコポラミンはどちらも精神活性化合物で、見当識障害、感覚の乱れ、鮮明な幻覚を引き起こす。研究者らの報告は6日発行のサイエンティフィック・リポーツ誌に掲載された。

人類の間で薬物の使用は、数千年の歴史を持つ慣行として知られる。それはこれまでユーラシア大陸や南北米大陸で見つかった手掛かりに基づいていた。しかし欧州では、精神に作用する植物が先史時代の遺跡に存在していても、考古学者らに提示される実態は不完全なものだった。そこには太古の共同体に暮らす人々がそうした植物を摂取していた証拠が欠如していたと、論文の筆頭著者でスペイン・バジャドリード大学の先史学准教授を務めるエリサ・ゲラドーセ氏は説明する。

同氏はCNNの取材に答え、今回の新たな発見を通じ、欧州の先史時代における薬物使用のもっとも古い証拠が示されたと述べた。

先史時代、葬儀の際に死者の頭髪を染める儀式を行う人々を描いたイラスト

当該の洞窟が見つかったのは1995年。入り口は崖の上から約25メートルの地点にある。内部は七つの部屋に分かれており、紀元前1400年から同800年まで葬儀の場だった。200人を超える成人と子どもが男女共に埋葬された。

毛髪の房から検出された物質は、全てメノルカ島に生えている植物から作られる。具体的にはシロバナヨウシュチョウセンアサガオ、ヒヨスアルブス、マンドレイク、ジョイントパインといった植物だ。

毛髪の入った筒が見つかった部屋は紀元前800年以降閉ざされており、人の手に触れられていない。そのため前出の化学物質が現代の影響によるものとは考えにくいと、ゲラドーセ氏は指摘する。これらの化学物質は摂取の後、毛髪に吸収されたものだ。毛髪の長さの分析から、薬物摂取は死亡する1年近く前から行われていたことが分かる。

洞窟からの発見で、儀式上の薬物使用にも光が当たるかもしれない。先史時代の欧州の社会において、薬物の使用にどのような役割が与えられていた可能性があるのか、突き止める手掛かりになりそうだ。

当該の毛髪のように染色され、切断されて筒の中で保管される例はごくわずかしかない。そのような人物は宗教の専門家といった特別な地位に就いていたとみられる。向精神作用を持つ植物を摂取していたのも、その地位と関連する可能性があると、ゲラドーセ氏は述べた。

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