タイの大気汚染が深刻化、森林火災の煙で健康被害続出

タイのチェンマイで森林火災の消火活動を行う消防署のヘリコプター/Pongmanat Tasiri/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

2023.04.06 Thu posted at 17:00 JST

タイ・バンコク(CNN) タイ北部で森林火災や野焼きによる煙のために大気汚染が深刻化している。チェンマイでは呼吸器の症状を訴える患者で満床になったという病院もある。

タイの大気汚染は長年の問題になっており、首都バンコクでは交通渋滞によって引き起こされるのが通常だった。

しかし今年は12月~4月にかけての野焼きや森林火災が広がった影響で、全土で大気汚染が悪化した。

大気汚染の程度を示す空気質指数(AQI)で見ると、チェンマイの大気汚染は少なくとも7日間連続で世界最悪となった。チェンマイは年間数百万人の外国人観光客が訪れる人気観光地で、4月は観光シーズンの終盤に当たる。

チェンマイでカフェを営む男性は、1月以来、大気汚染がますます深刻化して呼吸するのが危険になっていると話す。悪臭は強くなっているといい、「もう4月なのに状況が悪化している。改善はなく、みんな体調を崩している」「自分を死なせる空気を吸っていると思うと恐ろしい」と語った。

タイ地理情報・宇宙技術開発機構(GISTDA)が撮影して公開した3月下旬の衛星画像には、5572カ所のホットスポット(火災発生地点)が写っており、過去5年で最も多かった。

タイ政府の3月28日の発表によると、大気汚染は全土で170万人に、呼吸器疾患や皮膚の炎症、目の感染症などの影響を及ぼしている。

高機能マスクを住民に配布するチェンマイの市長

治療を求める患者が殺到

チェンマイ大学附属病院によると、チェンマイでは1月~3月にかけ、1万2000人以上が呼吸器の問題で治療を受けた。

同病院は、ぜんそく、呼吸器感染症、結膜炎、息切れを引き起こす肺気腫といった疾患で治療を求める患者の多さに対応し切れなくなっているという。

先週は数日間にわたってタイ中部ナコンナヨック県にある2つの山で火災が猛威を振るい、森林公園にまで燃え広がった。ヘリコプターを使った消火活動などで、火災は2日、ようやく消し止められた。

チェンマイ大学附属病院は「北部の至る所で煙危機が起きている。特にチェンマイではPM2.5による大気汚染が継続的に強まり、住民の健康に影響を与えている」と指摘する。

PM2.5は直径2.5マイクロメートルに満たない微小な粒子状の大気汚染物質。硫酸塩、硝酸塩、黒色炭素などが含まれ、肺や呼吸器の奥まで入り込むことから特に害が大きいとされる。こうした物質は肺疾患や心疾患との関係が指摘され、認知機能や免疫機能障害を引き起こすこともある。

病棟は満床状態が続いているため、入院して治療を受けられない患者もいるという。

一方で、チェンマイの別の病院の医師は、大気汚染に関係する疾患の患者数は多いとしながらも、この季節としては平常とみなされていると指摘した。

「逼迫(ひっぱく)はしておらず、まだ患者の受け入れができている。だが大気汚染に関連して治療を受ける人の数は増えている」と医師は述べ、「過去3年間の統計によれば、4月末が近づくにつれ、この数は徐々に減るはずだ。引き続き注意深く状況を見守る」とした。

世界保健機関(WHO)は大気汚染を「懸念すべき公衆衛生問題」と位置付け、寿命を縮める可能性があると指摘している。

英ロンドンの研究機関が2022年に実施した調査では、大気汚染が余命に与える影響は喫煙よりも大きいことが分かった。

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