自転車でアラスカからアルゼンチンへ 10代の旅に「悔いなし」

2022年にチリのカレテラ・オーストラルに到着したリアム・ガーナーさん/Liam Garner

2023.04.01 Sat posted at 17:00 JST

(CNN) 米カリフォルニア州の高校を卒業したばかりの17歳の少年が、アラスカ州から南米アルゼンチンまで、3万2000キロの道のりを自転車で走破した。

カリフォルニア州ロングビーチに住むリアム・ガーナーさんは以前、近くのロサンゼルスから自転車でサンフランシスコまで走ったことがあった。

さらにオレゴン州とアルゼンチンの間を自転車で走破した冒険家ジェディディア・ジェンキンス氏の本を読んで触発され、アラスカ州で道路がつながっている場所としては最北端のプルドー湾から南米の最南端、アルゼンチンのウシュアイアまで走ろうと決意した。

高校卒業を待ち構え、進学の準備を進める友人たちを横目に、丸1カ月かけて装備をそろえた。

2021年8月1日、米KHS社のマウンテンバイクにテントと寝袋、1日分の食べ物と水、携帯用バッテリー、救急セットと予備の自転車部品を積んで出発した。

サンフランシスコへの自転車旅行でフォロワーが増えていた動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に、旅の様子を投稿することにした。

メキシコやグアテマラ、ニカラグア、コロンビア、ペルー、チリ、アルゼンチンなど計14カ国を通過するルート。毎日、南へ向かっていれば間違いない。どの道を通るかはその時の気分で決めた。

両親はどちらも猛反対だった。父には出発した後で知らせたところ、アラスカまで電話がかかってきたという。だが今は2人とも、熱心に応援してくれている。

アルゼンチンのウシュアイアに到着したガーナーさん=2023年1月10日

もともと自転車に乗り始めたのは車がないという理由からだったが、今では最高の移動手段だと思っている。車や飛行機と違ってゆっくりと、自分の足を動かして進むから、小さな町や曲がり角にも愛着がわく。

メキシコを通過した4カ月半は、これまでの人生で最も有意義だったと振り返る。一家がメキシコ出身なので毎年訪ねてはいたが、言葉は分からない。その国を自転車で走り抜けながら言葉も習うのは、貴重な経験だった。

出発した時はほとんど金を持たず、1カ月430ドル(約5万7000円)の予算で切り抜けた。「純白人の金持ち」だからこんな旅ができたのだろうというコメントもあったが、「実際はメキシコ系の1世で裕福でもなく、費用は自分で出した。自転車旅行にそれほどお金はかからない」と強調する。

旅先で出会った中には毎晩ホテルに泊まる人もいれば、ごみ袋を乗せて走る人もいた。

旅行中の約8カ月はローガンという名前の仲間と一緒だったが、コロンビアに入ったところで分かれ、その後は単独で走った。

特に印象的だったのはエルサルバドル。「とても平和で居心地が良く、静かな国だった」という。

つらい経験もあった。持ち物を盗まれたのは少なくとも5回。コロンビアでは転倒して頭を打ち、40針も縫うけがをして1カ月間入院した。これをきっかけに、遺書を書くことにした。

メキシコ南部でローガンとともに携帯電話を盗まれたうえに、40度を超える暑さが2週間以上続いた時は、バスに飛び乗って家に帰ることも考えた。

最後の1カ月は、ひたすらゴールインの瞬間を想像していた。目的地のウシュアイアにたどり着いたのは今年の1月10日。計3万2000キロ、527日間の長い旅だった。

2021年8月にアラスカから出発したとき、ガーナーさんは17歳だった

観光客でにぎわう街であっけなく終わった旅に、最初は少しがっかりしたが、現地の国立公園で2~3日過ごすうちに、ゴールの街はどこでもよかったこと、そこにたどり着くことが大事だったことに思い至ったという。

それから間もなく、サンフランシスコへの旅で知り合った女性、クロエさんと合流した。2人の友情は、ガーナーさんが旅を続ける間に遠距離恋愛に発展していた。

2人はバックパックを背負って帰途に就いた。ガーナーさんが自転車で通ったルートを逆にたどり、7月にはカリフォルニア州に戻る予定だ。

ガーナーさんは19歳になった。帰宅後は自転車旅行の本を書こうと思っている。TikTokやインスタグラムへの投稿を読んで、同じように挑戦したくなったというメッセージがたくさん寄せられ、中には実行に移している人もいる。自分がそんな影響を与えられるのはとてもうれしいことだと、ガーナーさんは話す。

卒業後すぐに進学した友人たちとは別の道を選んだことに、まったく悔いはない。旅に出ていなければ、こんなに視野が広がることはなかった。ガーナーさんは「これまでの人生で一番的確な判断だったと思う」と、力を込めた。

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