住民に健康被害、美しいビーチが油まみれ 沈没タンカーから大量流出 フィリピン

フィリピン東ミンドロ州ポラの海岸線=8日/Ezra Acayan/Getty Images AsiaPac/Getty Images

2023.03.10 Fri posted at 11:00 JST

香港(CNN) フィリピン沖で沈没したタンカーから大量の油が流出し、美しいビーチやダイビングスポットが油まみれになっている。当局者によると、住民は健康被害を訴え、観光業や多様性に富む海洋生物が脅かされている。

「MTプリンセス・エンプレス」は2月28日、首都マニラ南西部の東ミンドロ州沖で沈没し、搭載していた工業用燃料油が周辺の海に流出した。

当局は9地区に非常事態を宣言し、遊泳や釣りを禁止している。

被害が出ている海沿いの町ポラのジェニファー・クルーズ市長は9日、CNN提携局CNNフィリピンの取材に対し、50人以上の住民に健康被害が出ており、せきやめまい、目の不快感、発熱などの症状を訴えていると語った。

「状況はこの9日間で悪化している。悪臭がどんどん強くなり、天気も暑くなっている」「体調を崩す人も増えている。私はこの臭いで気分が悪くなり、被害が出ている場所の一つは訪れることができなかった」(クルーズ市長)

ポラで撮影された写真には、黒い油の塊が海上を漂い、海岸に漂着する様子が写っている。海岸では油まみれの残骸を手で拾い集める作業が行われていた。

同州の人口は90万人以上。観光シーズンを前に、ビーチリゾートは予約のキャンセルが相次いでいる。

ポラにあるブルースター・ビーチリゾートの担当者は「我々の敷地内のビーチにも油が到達し、砂に付着している。何日も前から海岸に漂着している油の強い臭いで体調を崩した人もいる」と語った。

当局によると、環境への影響についてはまだ判断できていない。

しかし環境天然資源省(DENR)は、流出を食い止めなければサンゴ礁や海草、マングローブなどの海洋保護区少なくとも21カ所に被害が及ぶ恐れがあると予想する。

ポラのクルーズ市長によると、油は既にマングローブ林を覆っているという。マングローブ林は海岸の浸食を食い止め、台風などの被害を防ぐ役割を果たしている。

清掃を行う沿岸警備隊員=8日

駐フィリピン日本大使は8日、除去作業を支援するため日本から災害対策チームを派遣するとツイートした。フィリピン沿岸警備隊によれば、流出を封じ込めようとする取り組みは、作業員の健康と安全上の理由から、何度も中断されている。

一方、当局は沈没したタンカーの回収を急いでいる。沈没地点に近いベルデ島航路は、首都マニラのあるルソン島とミンドロ島を結ぶ主要海上輸送路となっている。

沿岸警備隊によると、MTプリンセス・エンプレスは工業用燃料油80万リットルを積んでフィリピン北部バターン州から中部のイロイロ州へ向かう途中、エンジンが過熱して沈没した。


油のたまった海岸線=8日、フィリピン東ミンドロ州ポラ/Ezra Acayan/Getty Images

DENRは、1日に3万5000~5万リットルの油が船体から流出していると推定。油は遠く離れたクヨ諸島にまで到達しているという。フィリピン大学海洋科学研究所は、今後も南西の方角への流出が続き、多様な生態系をもつ北部のパラワン島が脅かされると予想している。

沿岸警備隊は慎重を期すための措置として、再生作業を経て2018年に観光客の受け入れを再開したばかりのリゾート島、ボラカイ島にも人員を配置した。

フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は8日、除去作業が4カ月以内に完了することを期待するとの声明を発表した。

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