(CNN) 世界最北の森林は地球温暖化汚染の「時限爆弾」になりかねないとする研究結果を、米国や中国の研究チームが発表した。こうした北方林では森林火災が拡大し、記録的な量の温室効果ガスが放出されている。
研究チームが新たな衛星データ解析技術を使って調べた結果、世界の極北地を覆う北方林で2000年以来、夏の森林火災が拡大していることが分かった。
北方林の火災を原因とする炭素汚染は通常、世界の森林火災に関連した炭素汚染の10%を占める。しかし今回の研究によれば、21年はシベリアやカナダを覆った極端な干ばつと熱波の影響で、この割合が23%に増大した。
「北方林は炭素の時限爆弾になるかもしれない。このところの森林火災で排出量が増え、刻々と時刻が進むことを憂慮する」。米カリフォルニア大学アーバイン校のスティーブン・デイビス教授はプレスリリースの中でそう指摘した。
北方林はカナダ、ロシア、アラスカの広大な地を覆い、世界最大の陸上生物群系を形成する。炭素密度も高く、森林火災によって放出される面積当たりの温室効果ガスは、他の森林の10~20倍にもなる。
北方林は地球上の生物群系の中でも特に速いペースで温暖化が進んでおり、火災発生シーズンの温暖化と干ばつ化によって森林火災は拡大している。
21年はロシアのシベリア地方が特に大規模な森林火災に見舞われ、ロシアで約1816万ヘクタールの森林が焼失した。
同年7月、偵察機のパイロットはCNNの取材に対し、ロシア極東サハ共和国の上空は、火災の煙が厚く立ち込めていて飛行できないと語った。
同地はもともと森林火災が発生しやすい地域だが、状況が変わったとパイロットは証言。「昨年は火災がなく、以前は全く燃えたことがなかったサハ共和国北部で、新たな火災が発生している」と話した。
森林火災は大規模化して激しさを増し、これまでそうした大規模火災が起きていなかった場所でも起きるようになっている。論文を執筆した中国・清華大学の研究者はCNNの電子メール取材に対し、気温の上昇に伴って状況は一層悪化するだろうと予想した。
気温が上がれば植生が増え、熱波のために極端な乾燥状態となって、森林火災のリスクは増す。
気候変動と北方林火災の間で、互いに変化を強める「正のフィードバック」が起きていると研究者は言い、「北方地域では熱波や干ばつがさらに頻繁に起きるようになるだろう。21年のような極端な森林火災の頻度や激しさが増し、翻って二酸化炭素の放出が地球温暖化を一層加速させる」と指摘した。
この研究に加わっていない全米オーデュボン協会の専門家は、北方林火災でこれほどの規模の炭素汚染が発生しているという研究結果には驚かなかったとしながらも、「21年の急増はショッキング」だったと語り、二酸化炭素の排出量を激減させる必要があることが、改めて裏付けられたと話している。