(CNN) 米テネシー州メンフィスで警官から激しい暴行を受けたタイリー・ニコルズさんが死亡した事件をめぐり、警察による当初の報告書が後に公開されたボディーカメラなどの映像と食い違っていることが分かった。報告書はニコルズさんに対する交通違反の取り締まりの数時間後に提出されたが、ニコルズさんが暴力的だったと示唆する内容だった。
警察は1月7日、交通違反の取り締まりでニコルズさんの運転する車を停車させた。その後ニコルズさんを地面に伏せさせ、立て続けに殴打。ニコルズさんはこの時負ったけががもとで、3日後に死亡した。
警察の当初の報告書では、ニコルズさんが警官らと「争い始めた」とあり、一時は彼らの銃をつかんだとされている。しかし先週公開された警察の映像には、そうした主張を裏付ける場面はなかった。
また実際の映像にはニコルズさんが抵抗する姿は映っていなかったにもかかわらず、報告書はニコルズさんを加重暴行の容疑者と特定している。一方で警官らがニコルズさんを殴り、蹴ったことには言及がなかった。
現場にいた警官の1人は、報告書の中で「被害者」と説明されている。この警官はその後殺人罪で起訴された。
このほか報告書はニコルズさんが停車させられた件について、高速で無謀な運転をしていたと主張するが、映像からはその裏付けが取れていない。
当局は警察の報告書を公開していないが、その画像がメンフィスのラジオ番組の司会者によって投稿された。報告書の記述は米紙ニューヨーク・タイムズが最初に報じた。
報告書によると、ニコルズさんは車を降りるとき怒った様子で大汗をかいており、警察による合法な拘束を拒んだという。催涙スプレーやテーザー銃は効果がなかったとしている。
警察の報告書を誰が作成したのかは不明。報告書はメンフィス警察署とシェルビー郡保安官事務所の両方に言及している。CNNはメンフィス警察に連絡を取ったが、返答はなかった。
シェルビー郡保安官事務所は報告書に関するコメントを拒否。捜査と関係のある報告書の公開は正式に認められておらず、保安官事務所としてコメントできないとした。
報告書は警官のボディーカメラや防犯カメラの映像とは食い違っているものの、ニコルズさんが手錠を掛けられた後で警官らが話している内容には合致しているとみられる。それによると警官らは、ニコルズさんに対して少なくとも2度、催涙スプレーを使用、テーザー銃を発射したことも示唆した。またある警官はニコルズさんに殴られるところだったと話し、別の警官はニコルズさんに自分の銃をつかまれたと主張した。