(CNN) 米テネシー州で警察に逮捕された黒人男性が死亡した事件に関して、同州メンフィス市は27日、当時警官らが身に着けていたボディーカメラや防犯カメラの映像を公開した。映像には交通違反の取り締まりで男性の車を停止させる様子や、その後の暴力的な争いが収められている。
逮捕されたタイリー・ニコルズさん(29)は、この時の争いで負ったけががもとで3日後の今月10日に死亡した。事件に関連して免職処分となったメンフィス警察の警官5人は、殺人や誘拐の罪で起訴された。ニコルズさんの初期治療に携わったメンフィス消防署の職員も、初期捜査の結果が出るまで職務を解かれている。
CNNが検証中の当該の映像では、交通違反取り締まりの現場に到着した警官1人が銃を抜いて、車から降りてくる。警官らはFワードを交えながら、ニコルズさんに車から降りて地面に伏せるよう命令。ニコルズさんは「何もしていない」「分かった。地面に伏せる」と答えている。
その後もみ合いとなり、ニコルズさんは立ち上がって逃走。警官らが追跡を始めた。警官の1人は無線に向かって容疑者が逃走したと連絡。容疑者の服装などを伝えた。その上でテーザー銃からカートリッジを外した。
警官らは、住宅街にある別の場所で再びニコルズさんともみ合いになった。大声で母親を呼ぶニコルズさんに対し、警官らが「またスプレーを浴びたいのか?」などと尋ねている。
地面に伏せた状態で2人の警察官から殴打されると、ニコルズさんは大声でうめいた。その後、別の警官がニコルズさんに催涙スプレーをかけたように見える。
この間、ニコルズさんは大声で母親を呼び続けた。
近くの電柱に設置された防犯カメラの映像では、警官らがニコルズさんを少なくとも9回殴っている。ニコルズさんから警官を挑発した様子はない。警官1人は、膝(ひざ)か脚でニコルズさんを舗装道路に強く押し付けているように見える。
ニコルズさんは肩から持ち上げられた状態で顔を2回蹴られた。次いで座った姿勢を取らされ、背中を警棒とみられるもので殴られた。さらに膝立ちにさせられてから、再度殴られた。
映像は立たされたニコルズさんが顔を何度も殴られる様子を捉えている。この時手は体の後ろで押さえつけられている。その後、膝をついたニコルズさんを警官の1人が蹴っているように見える。
争いがカメラに映ってから3分以上が経過した時点で、警官らはニコルズさんから手を放した。ニコルズさんは仰向けに横たわった。
1分後、ニコルズさんは道路を引きずられ、車の側面に体を預けて座らされた。そこから3分以上、ほぼ放置される状況が続いた。映像の時間が10分を回るところで、救急隊員とみられる人物1人がようやくニコルズさんの対応に当たった。このとき、ニコルズさんは意識がないように見える。
ニコルズさんが仰向けに倒れてから、担架が到着するまで23分が経過していた。救急車が画面に映ったのはその2分後だった。
映像には、警官らがニコルズさんの逮捕について話す音声も記録されている。それによると警官らは、ニコルズさんに対して少なくとも2度、催涙スプレーを使用、テーザー銃を発射したことも示唆した。またある警官はニコルズさんに殴られるところだったと話し、別の警官はニコルズさんに自分の銃をつかまれたと主張した。
警官の1人は、交通違反の取り締まりにも言及。ニコルズさんの車が停車の呼びかけに応じなかったと話した。