アブダビ(CNN) 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は25日、イランの核開発阻止に向けた外交努力の再開を訴えた。その中でイラン政府について、核兵器で「複数発分」に相当する材料をすでに備蓄済みだと警鐘を鳴らした。
テヘラン訪問に先立ちブリュッセルで開かれた欧州議会の小委員会で述べた。イランはまだ核兵器を製造していないものの、それを食い止めるには西側諸国による格段の取り組みの強化が求められると主張した。
ウランは濃縮度90%以上で核兵器への転用が可能になる。グロッシ氏によれば、イランは現在濃縮度60%のウランを70キロ、濃縮度20%のウランを1000キロ、それぞれ備蓄している。
グロッシ氏は来月、「政治的対話」のためテヘランを訪問予定。イランとの間では2015年に核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」が結ばれたが、同氏によれば合意は現状「中身がなく」、復活につながる外交活動も行われなくなりつつあるのが実情だという。
昨年、IAEAはイランに対し、未申告施設からウラン粒子が検知された理由の説明を求めたが、イラン側はこれに反発。IAEAの設置したカメラ27台を撤去する対抗策に出ていた。
グロッシ氏は24日、カメラの撤去により原料や設備、遠心分離機が現状どの程度の規模で存在するのかといった内容が把握できなくなっていると明らかにした。
イランのエスラミ原子力庁長官は、グロッシ氏の訪問計画について確認した。政府系のファルス通信が25日に報じた。
ブーシェフル原子力発電所の原子炉建屋=2010年8月、イラン南部のブーシェフル原子力発電所 /IIPA Getty Images
ただ米国とイランの関係が緊迫化している状況を受け、核合意復活に向けた取り組み自体は失速傾向にある。