ドバイの海岸に描く巨大な砂絵 ギネス記録のアーティスト

2014年にアラピデさんが描いた木の砂絵/Jojo Villena

2023.01.19 Thu posted at 12:09 JST

(CNN) アラブ首長国連邦(UAE)ドバイを拠点に活動するフィリピン人アーティスト、ナサニエル・アラピデさん(45)のキャンバスは、陽光あふれる広大な砂浜と砂漠だ。昨年は「世界最大の砂絵」のギネス記録も達成した。

道具は簡単な庭用の熊手だけ。筆のように角度を変えながら使いこなす。

毎朝、天気や風向き、潮流を確認してから、砂浜や砂漠に巨大で複雑な作品を描く。だがそれは、まもなく風や波に消されてしまう。

作品の大きさは平均で約20メートル四方。メッセージを入れる場合は長さが100メートルを超えたりする。

1時間で完成する作品もあれば、毎日何時間も費やして仕上げる作品もある。

きっかけは2014年、波をモチーフにしたジュメイラビーチホテルの裏手の砂浜に、亡き祖母にささげようと描いた樹木の絵だった。その大きさに感動したホテルから、アーティストとして働かないかと声がかかった。これはアラピデさんにとって、フルタイムの初仕事になった。

アラピデさんはその後、UAEで約1900件の作品を制作してきた。バーバリー、アディダスのような有名ブランドや、米専門チャンネル「ナショナルジオグラフィック」によるドキュメンタリー・シリーズの仕事を依頼されたこともある。

UAE政府の仕事では、新型コロナウイルス感染対策のスローガン「#ステイホーム」を巨大な文字で書いた。

昨年アブダビ航空クラブに依頼され、30日間かけてUAEの歴代首長を描いた2万3000平方メートルの力作は、世界一大きな砂絵としてギネス認定された。

UAE各地の砂漠から4色、計1万2000トンの砂を運び込んでの作業だった。

海岸の波打ち際近くに描かれた砂絵

20日目にほぼ70%が完成したところで雨と強風に見舞われ、ほとんどが消えてしまうという経験もした。

アラピデさんは「そこが面白いところだ」と話す。刹那(せつな)的ではかなく、朝描いても夜までには波に消される。「私にとっては朝の祈りに似た儀式のよう」だという。万物が絶え間なく移り変わっているということを思い知らされる。ドバイのような街は、特に変化が激しい。

アラピデさんによると、人々はこうした作品の中に「美しさ」と「喪失」を同時に見出す。

アラピデさんは、人々が作品と影響を及ぼし合う場面を見るのが好きだ。子どもたちは大人よりも作品に気づきやすいことが分かった。

「大人は忙しい日々に追われて見えなくなってしまうのに対し、子どものほうが自分の環境をよく把握しているのだろう」と、アラピデさんは話している。

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