ボーイング747 空の旅に変革をもたらした「空の女王」

747-8フレイター。米ワシントン州の工場を出る最後のボーイング747型機となった=2022年12月6日/Paul Weatherman/Boeing

2023.01.07 Sat posted at 13:00 JST

(CNN) 「空の女王」の愛称で知られるボーイング747の初飛行から50年以上が経過し、最後の747型機が先ごろ組み立てラインを離れた。

その747―8フレイター(貨物機)は、昨年12月7日にワシントン州エバレットにあるボーイングの工場を出発し、2023年はじめに米国の貨物航空会社アトラス航空に引き渡される。

これは世界で最も有名なジェット旅客機であるボーイング747の時代の終わりを告げる出来事であり、同機がその役目を終える日は確実に近づいている。

航空分析会社シリウムによると、現在稼働中の747型旅客機はわずか44機だという。しかし、747型貨物機はまだ300機以上が稼働している。

最後の747型機


ボーイングは50年あまり前に始まった「空の女王」の生産を終了した/David Ryder/Bloomberg/Getty Images

1969年2月9日にボーイング747の第1号機が初飛行を行い、その1年後にパンアメリカン航空の路線に就航した。

747はすぐに人気の旅客機となったが、その後、多くの航空会社が747型旅客機から同機よりも機体が大きく、性能や効率性の高い双発機に乗り換えた。

ブリティッシュ・エアウェイズは2020年に新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による航空旅行の減少を理由に、ボーイング747型機の退役時期を4年前倒しすると発表した。

747型機の最新版は、747―8インターコンチネンタルで、初代747型機の設計者や操縦士には想像できないような最新の翼、エンジン、技術を搭載している。

世界初のワイドボディー機

747は、双通路型ワイドボディー旅客機の時代の先駆けとなった。ほぼ垂直の側壁と高い天井を備えた最初の飛行機であり、乗客に十分なスペースと開放感を与えた。

最後のボーイング747がボーイングの工場を出る様子=6日、ワシントン

細くて長い機体とは違い、キャビンは複数の「部屋」に分けられ、調理室や化粧室が仕切りとして設置された。

そして、この機体の形が半世紀近くにわたって長距離の空の旅の定番となっている。

空港も規模を拡大

1960年代の国際航空路線は、ボーイング707やダグラスDC―8が主力だったが、747の機体はそれらよりもはるかに大きかった。

空港では数百人もの乗客を乗せたジャンボジェット機が次々と発着するため、各空港は搭乗ラウンジ、チェックインカウンター、ターミナルを拡張するなど、対応に追われた。

当時はどの国際線航空会社も747を運航する航空会社という名声を欲していたため、複数の747が同時に到着することになり、既存の税関や出入国審査場はすぐに大混雑となった。

また地上支援装置(GSE)の増強も必要になった。飛行機牽引(けんいん)車も340トン以上という747の桁違いの重量に対応するため大幅に大型化した。

またケータリングトラックもタラップのはるか上に位置するドアに届くように改造され、給油タンク車も巨大な翼の下側にある給油口までホースを伸ばす必要がある。

優れた貨物機

747が設計された当時、航空業界では超音速旅客機(SST)が将来の航空機になると考えられていた。

60年代の専門家たちは、747の旅客機としての寿命は短く、いずれ音速の数倍の速さで飛行する航空機に取って代わられると予想していた。そこで747の設計者らは、747が将来も利用され続けるように貨物機に改造した。

747のメインデッキは約6メートルの幅があり、標準的な貨物専用コンテナを2つ積み込める。また貨物の積み込みを容易にするために、747型貨物機の機首は上向きに折れ曲がるように開く。

そのため、操縦室はメインデッキの上に配置する必要があった。747の操縦室のすぐ後ろに特徴的な「こぶ」があるのはそのためだ。

結局、ボーイングのSSTプロジェクト(ボーイング2707の開発)は71年に中止されたが、747に関しては、過去半世紀に1570機以上が製造された。

747はすぐさま優雅な旅の選択肢との評価を得た

初の高バイパス・ターボファン・エンジン搭載機

新型の飛行機と新型のエンジンは同時に開発される。新型機の設計者たちは高出力低燃費を目指すと同時に、エンジン開発者たちの軽量設計を生かそうとするかもしれない。

747も巨大な機体を飛ばし、航空会社に利益をもたらすために、エンジンの出力と効率の大幅な向上が必要だった。

米国の航空機用エンジンメーカー、プラット・アンド・ホイットニーが747向けに開発したJT9Dターボファン・エンジンは、ジェットエンジンの形状を永遠に変えた。このエンジンは前面に巨大なファンを備えている点でそれまでのエンジンと異なった。

膨大な量の空気がエンジンに流れ込むが、エンジンのコアに入るのはごくわずかだ。そこで圧縮された空気を燃料と混合して発火させ、タービンを駆動する。内部のタービンが巨大なファンを回転させ、ジェット機を前進させる。

エンジンが吸入した空気流の大半がエンジンのコアを通らず、迂回(うかい=バイパス)するJT9Dは、ジェット機時代初の「高バイパス」ターボファン・エンジンだった。

この設計のおかげで、エンジンはより静かでパワフルになり、燃料効率も向上した。

747は、この高バイパス・ターボファン・エンジンが搭載された最初のジェット旅客機だったかもしれないが、今やすべてのジェット旅客機が極めて信頼性が高く、高性能な高バイパス・ターボファン・エンジンを搭載している。

真のゲームチェンジャーは?

747は、社会が大きく変化した70年代初頭に就航した。747の登場により、空の旅や観光は飛躍的に成長し、世界の人々のつながりも大幅に深まった。就航1年目に、満席の747は乗客1人当たりの飛行コストを半分に削減し、航空機はあっと言う間に利用しやすい移動手段となった。

しかし、空の旅を最も大きく変えた航空機は747の旧モデルである707かもしれない。スムーズに飛行するこのジェット機のパイオニアは、それ以前のピストンエンジン搭載機からの飛躍的進歩だった。707は大陸間をわずか数時間で結び、世界にジェット機での旅行のすごさを見せつけた。

747が初飛行を行った時の副操縦士で、ボーイングの元航空業務担当副社長でもあるブライエン・ワイグル氏もそう考えている。

ワイグル氏は「短い飛行時間、より高い高度、優れた与圧システムなど、我々が707で示した多くの特徴は革新的だった」とし、「747は707と同じ方向にさらなる進化を遂げたが、707の功績は無視できない」と付け加えた。

「しかし747も素晴らしい航空機で、大好きだった」(ワイグル氏)

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