火星の塵旋風の音、米NASA探査車が初めて収録

火星探査車「パーサビアランス」が塵旋風の音を収録することに成功した/NASA/JPL-Caltech/MSSS

2022.12.14 Wed posted at 15:18 JST

(CNN) 火星の塵(ちり)がつむじ風に巻き上げられ、太古の湖の地を探査する米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーサビアランス」の上空を吹き抜けた。探査車は搭載のマイクを使ってこの火星の塵旋風(じんせんぷう)の音を初めて収録した。

塵旋風は火星の気象パターンの一部で、頻繁に発生する。これまでに画像や気象データは収集され、塵の測定が行われて、NASAの火星探査機「インサイト」は塵旋風が発生させた地震信号や磁気信号も記録していた。しかし今回収録されるまで、音声のみが欠けていた。

2021年2月に火星に着陸したパーサビアランスは、火星に初めてマイクを持ち込んだ。

同年9月27日、塵旋風が真上を通過した時に、たまたまマイクのスイッチが入っていたことから音声が収録できた。この研究は13日の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された。

フランス・トゥールーズ大学の研究者によると、マイクがとらえた11秒の記録には、塵旋風の前方の壁と後方の壁が探査車の上空を通過する際の低周波の風の音が2回、収録されている。

塵旋風の壁と壁の間の静寂は、探査車が塵旋風の渦の目の中にいた時間だった。塵の粒が探査車に当たって立てるパチパチという音も聞こえている。

  
      

研究チームはこの塵旋風の中の粒子の数を数えることに成功した。計器を使って火星で巻き上げられた塵の数を数えたのは初めてだった。

探査車と通過した塵旋風のイメージ図

探査車から届いた画像などのデータでも、この現象が確認された。研究チームは探査車が収集した情報をつなぎ合わせ、塵旋風が高さ118メートル以上、幅25メートル以上あったことを突き止めた。これは探査車の約10倍に相当する。収録された音声では巨大な塵旋風に思えるが、火星では平均的な大きさだという。

塵が外側の壁の中だけでなく、塵旋風の内部にも堆積(たいせき)していたことは、研究者にとって予想外だった。これは、塵旋風がパーサビアランスの上空を通過した時点で、まだ形成される途中だったためと思われる。

塵旋風は火星の大気の乱れを表し、火星の塵の循環に重要な役割を果たしている。

火星の地表で塵が巻き上げられて移動する現象について解明が進めば、砂嵐の形成と発達について理解を深める手がかりとなる。

15年にわたって火星の地表を探査してきた「オポチュニティー」は18年、砂嵐のためにミッションを終了した。

カメラが捉えた塵旋風(じんせんぷう)の様子

パーサビアランスも風や塵旋風で巻き上げられたと思われる塵粒子のために、風センサーが損傷している。

塵旋風は助けになることもあれば、害になることもある。

4年間にわたって火星の地震などの現象を観測していた探査機インサイトは、今月でミッションを終了する見通し。太陽光パネルに塵が積もり、計器を稼働させ続けるために必要な電力が確保できなくなった。

パーサビアランスが着陸したジェゼロクレーターでは塵旋風が頻繁に起こる。しかしインサイトのいる平原では発生していない様子。その理由は分かっていない。

インサイトの場合、大気中の塵が太陽光パネルに付着し、塵旋風が発生しないことから塵が吹き飛ばされることなく降り積もった。

一方、スピリットやオポチュニティーなどの探査機は、塵旋風が掃除機のような役目を果たして太陽光パネルの塵を吹き払い、想定以上に長期間の運用が可能になった。

火星探査車パーサビアランス、着陸の様子

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