カタール・ドーハ(CNN) サッカー・ワールドカップ(W杯)でフランス代表の試合を応援しようと、開催国のカタールまで自転車で旅した2人のフランス人がいる。
メディ・バラミッサさんと友人のガブリエル・マルタンさんは、フランスからカタールまでの最適な交通手段は自転車と考え、3カ月かけて7000キロの距離を移動した。
2人はカタールに到着した翌日、CNN Sportの取材に応じた。「クレージーなアイデアだったけれど、私たちは壮大なアイデアを持っていて、後悔したくないタイプなんだ」と、バラミッサさん。
「だから2人とも自営業だし、3カ月という時間を確保してカタールに行こうと決意した」
2人の長い旅は、フランス代表チームの本拠地であるパリのスタッド・ド・フランスからスタートした。ゴール地点は、カタール大会の決勝戦が行われるルサイル競技場だ。
1日平均115キロの距離を、時折休息を取りながら走破した。
2人は昨年、欧州サッカー連盟(UEFA)のネーションズリーグでフランス代表の試合を観戦するため、フランスからイタリアまで自転車で移動したことをきっかけに、これよりもっと長い距離を移動して自分たちを試してみようと考えた。
今回の旅が、持続可能な旅の素晴らしさを知ってもらう好機になると2人は願っており、帰国後は恵まれない環境にある子どもたちにサイクリングのワークショップを開催する予定だという。
だが、まずはドーハでの日々を楽しむつもりだ。何しろ、このためにこれまで懸命にやってきたのだから。
砂漠、森林、あらゆるものに挑む
2人はカタールに到着後、フランスサッカー連盟(FFF)の計らいでフランス代表メンバーと対面。FFFはグループリーグの3試合すべてのチケットを2人に提供した。
また、ディディエ・デシャン監督からは、フランス代表選手のサイン入りユニホームが1着ずつ贈られた。
「ここではすべてがW杯を中心に動いている。これからカタールへの見聞を日々広められることに、とてもわくわくしている」と、バラミッサさん。
「ここにいるフランス人の多くはとても親切だ。レストランをはじめ、さまざまな場所に連れて行ってくれるという」
CNNの取材に応じた2人は、わずか24時間前に過酷な旅を完遂したばかりなのに、驚くほどエネルギッシュだ。
計13カ国を走破した今回の旅について興奮気味に話す2人の目は輝いている。
旅の途中、数十回のパンクなど幾多のトラブルに見舞われながらも、2人は持ち前の前向きな姿勢で乗り越えた。
自転車の修理工場を探すため、15時間かけてサウジアラビアのリヤドまで移動し、そこからまた15時間かけて元の地点に戻ったこともあったと笑う2人。
「トラブルはたくさんあったが、その都度解決してきた。今回のような旅では、柔軟さが問われる。事実、旅の主要部分で柔軟性を持って、あらゆる状況にもベストを尽くして適応することが求められた。実際、うまくいったと思う」(マルタンさん)
旅路の大半を2人だけで、どこまでも続くさまざまな地形の道を自転車で走った。だが、時には現地の人と食事を共にし、その国の文化に浸ることもあったという。
サウジアラビアでは灼熱(しゃくねつ)の砂漠に挑み、ハンガリーでは浸水した森林地帯に挑んだ。道中、睡眠を取るためキャンプ場やロッジ、ホテルに立ち寄りながら、カタールまでの変化に富んだ道を走り続けた。
この挑戦は2人にとって、肉体的には足が慣れてからはそれほど大変ではなかった。精神的には、他人の優しさに支えられたという。
「最高のひとときはたくさんあった。欧州横断を終えた時もその一つ。本当に素晴らしかった。私たちは(トルコ・)イスタンブールの欧州側から橋を経由してアジア側に渡った」と語るバラミッサさん。
「通常、自転車で渡ることは禁止されている。だが、地元の警察と何時間も交渉したら、警察が橋まで同行して私たちを守ってくれた」とマルタンさん。道中で出会った人たちはとても寛大で親切だったと、彼は振り返る。
「クレージー」な旅の「特別」なエンディング
2人は、旅のもう一つのハイライトが、エルサレムでのサイクリングだったと意見が一致した。
最終目的地のカタールに近づくと、20人近くのフランス人やカタール人のサイクリストが加わり、最後の行程を共に走った。そして、カタールに到着すると世界のメディアやカタール在住のフランス人コミュニティーの人々が2人を出迎えた。
この3カ月間、孤独に過ごしてきた2人にとって、これほど多くの人に囲まれることは大きな驚きだったという。
「カタールに着いた時は、このクレージーな旅と楽しかったライフスタイルの終わりを意味するので、この上なく特別な気分だった」とバラミッサさんは語る。
2人はフランスが勝ち続ける限りカタールに滞在し、その後は飛行機で帰国する予定だ。
しばらくはフランスに戻ることはないだろうと、2人とも希望に満ちている。
「もちろんフランスは勝つから、決勝戦までいるつもりだ」とマルタンさんは冗談を言う。「そうでなければ、自転車でここまで来ることはなかった」
フランスからカタールまで自転車で走破