ウクライナ・ヘルソン(CNN) 血の混じった水たまりと、焼け焦げた自動車の残骸。それがウクライナ南部の都市、ヘルソンの目印だ。同市は24日にロシア軍の砲撃を受け、当局者によると4人が死亡。平穏な空気は打ち砕かれた。
ロシアのプーチン大統領はヘルソン州の併合を主張し、州の住民は今やロシア人だと明言した。ところが同氏の軍隊はヘルソンからの撤退後、一度は保護すると約束した民間人を殺害している。
電力や水道の供給が急速に失われる中で、ヘルソンの人々は苦境に立たされている。冬の到来が迫り、事態はますます悪化する見通しだ。
ウクライナ侵攻の開始直後、ヘルソンはロシア軍によって制圧された。占領がようやく終わったのは今月11日に同軍が撤退してからだ。今住民らは、ウクライナ各地で起きているのと同じ種類の暴力に苦しめられている。
最近の砲撃で小さな食料品店も破壊された。地元の男性がなりふり構わぬ様子で瓦礫(がれき)をかき分け、食料品やトイレットペーパーを持ち去っていく。そこまでひどい状況かと、こちらが尋ねると、男性は物悲しい口調で「良くない」と答えた。
水道水の供給はロシア軍の攻撃を受けて遮断された。取材班は年配の女性が1人、排水管の下にバケツを置いてポタポタと滴(したた)る水を集めているのを見た。
また、市に面して流れるドニプロ川の水を容器で汲(く)み、高台にある自宅へ持ち帰る女性もいる。この女性は「水なしでは生きられない。だからここへ来る」と語った。
遠くではロシア軍とウクライナ軍が撃ち合う砲撃の轟音(ごうおん)が鳴り響く。うかうかと歩き回っていていい場所ではない。
ほんの2週間前、市中心部の広場は歓喜に沸いていた。ロシア側にとって、同市からの撤退は今回の戦争における最大の敗北の一つだった。
今は地元の行政府が立てた複数のテントが、現地の様々な苦難を象徴する。これらのテントは暖を取るためのものや携帯電話の充電をするためのものなど、目的別に設置されている。
充電用のテントの中では、あらゆる年齢層の人々が大勢でテーブルを囲み、紅茶を飲みながら自分たちの携帯電話の充電作業を行っていた。
娘とテントに来ていたハンナさんは、占領されていた時期を「とてもつらかった」と振り返りつつ、「今の方が生活はずっと良くなったと言える。確かに水も電気もないが、ロシア人もいない。多少の苦労などなんとも思わない。私たちは乗り越えられる」と話した。
前日が9歳の誕生日だったという娘のナスチャさんは、ウクライナ国旗のフェイスペインティングを施し、肩にも同国旗を羽織っていた。
占領されていた数カ月で、周囲の大人たちと同様ロシア軍に対する反抗心を身につけたナスチャさんは、「敵はもうすぐ全滅すると思う」「ウクライナを占領したらどうなるか、私たちが思い知らせる」と語った。
ロシア軍撤退から2週間、砲撃受けるヘルソン市民の窮状