COP27 気候変動の被害者支援へ基金創設で合意、化石燃料の廃止は示せず

洪水に見舞われたパキスタン・バルチスタン州の様子=8月30日/Fida Hussain/AFP/Getty Images

2022.11.21 Mon posted at 15:07 JST

エジプト・シャルムエルシェイク(CNN) エジプト・シャルムエルシェイクで約2週間の会期で開かれ、世界の200近い国・地域が参加した国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は20日、化石燃料の段階的廃止について合意に至らないまま閉幕した。

一方、気候変動による災害に対してぜい弱な国々を支援する「損失と損害」基金の設立では歴史的な合意に至った。2030年までに温室効果ガスを半分近く削減する必要性でも合意し、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるという目標も再確認した。

最大の温暖化要因である化石燃料を巡っては、石炭だけでなく全ての化石燃料を段階的に廃止する提案が上がったが、中国やサウジアラビアなどの国々の抵抗で合意に至らなかった。

ドイツのベアボック外相は「延び延びになっている緩和措置や化石燃料の段階的廃止が、排出量の多い国や産油国によって阻まれる事態を見て、いら立ち以上のものを感じる」と述べた。欧州連合(EU)で気候変動担当のティマーマンス欧州委員会上級副委員長はCOP27の結果に「失望する」と語った。

気候変動危機の被害者にとって勝利

世界で最もぜい弱な国々を「損害と損失」への対応で支援する枠組みへの合意は大きな成果となった。気候変動による災害は裕福な工業国から多く排出された汚染で悪化しているが、米国やEUなど長年渋っていた国やグループが初めて支援基金に合意した。

会期中、記者団の質問に答える欧州委員会のティマーマンス上級副委員長

交渉担当者や交渉を見守ったNGOは、極めて大きな成果だと称賛した。合意に向けては途上国や島国が団結して圧力を強める動きも見せていた。

小島嶼(とうしょ)国連合のモルウィン・ジョセフ議長は「我々の世界全体の勝利だ」と評価した。専門家によれば、途上国のグループ「G77」も団結してこの問題の前進で圧力を強めていた。

大きな被害を出したパキスタンの洪水など、気候変動による災害の発生が世界の注目を集めたことも基金設立の後押しとなった。

今後は資金拠出をどう実現するかといった点に焦点が移る。バイデン政権高官によると、基金には責任や補償の条項は含まれていないという。

米国や他の先進国は長年、他国からの法的責任の追及や訴訟のリスクを生じさせるような規定を避けようと努力してきた。米国のケリー気候変動問題担当大統領特使は、損害と損失は補償と同じものではないと指摘。「『補償』はこの文脈で使われる言葉、用語ではない。我々は先進国が途上国を気候変動への対応で支援することは必要だと常々言ってきた」と述べていた。

基金の運用の詳細はまだ決まっていない。いつ詳細が決まり運用が始まるのか、どのように資金が賄われるのか、合意文書には多くの疑問点が残る。詳細は暫定委員会で詰めるとされているが、その期限も設定されていない。

1.5度以内の文言は維持

COP27は世界の気温上昇を1.5度以内に抑える目標を確認した。ただ、専門家からは、目標達成に必要な化石燃料の段階的廃止に関する文言がなかったことに落胆の声が上がっている。

米国のケリー気候変動問題担当大統領特使と中国の解振華・気候変動特使

昨年英グラスゴーで開かれたCOP26と同様、合意文書には石炭火力発電の段階的縮小と「非効率な化石燃料補助金の段階的廃止」は盛り込まれたものの、石油や天然ガスなど全ての化石燃料の段階的廃止を求める文言はなかった。

欧州気候基金のローレンス・トゥビアナ最高経営責任者(CEO)は「化石燃料業界の影響が全面的にあった」と指摘し、「エジプトの議長は明らかに石油・天然ガス国家や化石燃料業界を守る文言を提示した」と語った。

昨年グラスゴーで合意された1.5度の基準を巡っては、それを維持するための目覚ましい動きも見られた。

EUの当局者は19日、高官を並べて記者会見を開き、もし最終合意に気温上昇を1.5度以内に抑えるとの目標が含まれないならCOP27から去ると脅しをかけた。前述のティマーマンス氏は「悪い合意よりは合意がない方がいい」と語った。

米中の気候変動対話が再開

COP27の期間中、温暖化ガスの2大排出国である米国と中国が気候変動対策に関する協議を再開させたことも大きな成果となった。

中国は今夏、米国のペロシ下院議長の台湾訪問後に協議を中止。バイデン米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席が先週、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されたインドネシア・バリ島で会談して対話の再開で合意し、ケリー氏と中国の解振華・気候変動特使の正式な協議再開が実現した。

情報筋によると、米中両国は先週会合を重ね、協議停止前の進捗(しんちょく)を確認。強力な温室効果があるメタンガスの排出削減に向けた中国の計画や、両国の全体的な排出目標など、具体的な行動に関する議論が進んだという。

昨年のように両国から気候変動に関する大きな共同声明はなかったものの、協議の再開自体は今後の明るい兆しとなった。

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