独首相と大手企業CEOが北京訪問、かつてないほど中国を必要とするドイツの実情

北京の国際空港に降り立ったドイツのショルツ首相(中央)/Kay Nietfeld/picture alliance/Getty Images

2022.11.04 Fri posted at 18:48 JST

香港/ロンドン(CNN Business) ドイツのショルツ首相が4日、大企業のトップからなる一団を引き連れて中国に到着した。そこには、世界2位の経済大国とのビジネスは今後も続けなくてはならないという明確なメッセージが込められている。

4日午前に北京へ降り立ったショルツ氏は、人民大会堂で習近平(シーチンピン)国家主席と会談した。国営メディアが伝えた。午後には李克強(リーコーチアン)首相とも会談した。

1日のみの慌ただしい日程の中、ショルツ氏に同行したのは独産業界の巨大企業12社の代表団だ。その中にはフォルクスワーゲン(VW)、ドイツ銀行、シーメンスなどの最高経営責任者(CEO)らが含まれる。事情に詳しい人物が明らかにした。彼らは中国企業と非公開の会談を行う予定。

一行は、通常行われる7日間のホテルでの隔離なしに中国入りした。現地の画像には、新型コロナウイルス検査を行うため、防護服に身を包んだ医療従事者がショルツ氏を乗せたジェット機を迎える様子が写っている。

4日午前の首脳会談で、習氏はドイツと中国が「複雑かつ不安定な」国際情勢の中で協力することを呼び掛けた。また今回の訪問について「互いの理解と信頼を高め、様々な領域での実際的な協力が深まる。中独関係の次の段階を見据えるものになるだろう」と述べた。国営中央テレビ(CCTV)が提供した公式声明で明らかになった。

主要7カ国(G7)の首脳が中国を訪れるのは約3年ぶり。今回のショルツ氏の訪中は、ドイツがリセッション(景気後退)に滑り落ちようとするタイミングで行われた。

独ハンブルクの港湾に停泊する中国遠洋運輸集団のコンテナ船

ロシアによる今年のウクライナ侵攻以降、ドイツは長年にわたるロシアへのエネルギー依存を断ち切る必要に迫られている。ただ現在、連立政権の一部にはドイツが中国との関係を深めることについて一段と神経をとがらせる向きもある。

最近、中国国営の大手造船会社、中国遠洋運輸集団がハンブルク港のターミナルの一つを運営する会社の株式を35%取得しようとした際には激しい論争が巻き起こった。結局政権の一部メンバーからの圧力を受ける形で、出資比率は24.9%に抑えられた。

ドイツ側の懸念は、中国との関係が一段と近づけば極めて重要なインフラが中国政府からの政治的圧力にさらされ、中国企業に不均衡な恩恵をもたらすだろうというものだ。

それでも景気低迷からの復活という課題に苦慮するドイツが、中国と事を構える立場に身を置くことはまずない。キール世界経済研究所の推計によれば、欧州連合(EU)と中国の貿易が大きく縮小すれば、ドイツの国内総生産(GDP)は1%低下するという。

ワルシャワ大学で政治学と国際関係学を専攻するラファル・ウラトフスキー助教は中国について、ドイツにとって失いたくない市場であり経済的パートナーと指摘。両国はこうした関係を可能な限り長く維持しようとするとの見解を示した。

中国における人権問題の観点からも、ドイツ政府には圧力がかかっている。70の人権団体からなる組織は2日、公開書簡でショルツ氏に対し、北京行きの「再考」を求めた。

今年1カ月にわたるロックダウン(都市封鎖)が行われた上海の超高層ビル群

ショルツ氏は同日の新聞への寄稿で、訪中を利用して「困難な課題に対処する」と説明。その中には「人権や政治的自由のほか、新疆ウイグル自治区に暮らす少数民族の権利の尊重」も含まれるとした。

また政府の報道官は先週、会見で広範な批判の声に応え、ドイツにとって最も重要な貿易相手との「関係を断ち切る」意図はないと明言した。

公式の統計によると、昨年中国は6年連続でドイツの最大の貿易相手国となった。対中国貿易額は2450億ユーロ(現在のレートで約35兆円)と、前年比で15%以上増加した。

一方で中国政府の導入する「ゼロコロナ」政策は、ドイツ企業にとって依然として最も深刻な課題となっている。中国のドイツ商工会議所のブテク会頭はCNN Businessの取材に答え、「各種の規制で経済成長が抑えつけられている。海外からの直接投資先としての中国の魅力にも重大な影響が及んでいる」と強調した。

それでもVWは今回の訪中に当たり、短い声明を発表。地政学や世界経済が一変する状況にあって同社のCEOが自ら現地で意見を交換する機会ととらえていると明かした。

中国は今年の1~9月期、VWの世界納車台数の40%を占めた。メルセデスなど他の自動車メーカーにとっても最大の市場となっている。

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