韓国・ソウル(CNN) 155人の死者を出した韓国・ソウルの転倒事故で、当局は31日、ハロウィーンのイベントに集まる大勢の群衆に対応する雑踏警備のガイドラインが存在していなかったことを明らかにした。犠牲者の死をいたむ声は、国内外に広がっている。
転倒事故は10月29日夜、ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で発生。幅4メートルにも満たない狭い路地に何千人もの人がひしめき合い、巻き込まれた人たちは動くことも呼吸することもできなかったと証言している。
死者や負傷者に関する情報提供の場として当局が設置した情報センターには30日、取り乱した様子の家族が集まり、行方が分からなくなった家族を見つけようと必死で遺体安置所や病院に連絡を取っていた。
その後、犠牲者全員の身元が確認され、ソウル中心部には31日、祭壇が設けられた。次々に訪れた人たちは犠牲者をしのんで涙を流し、花をたむけたり、ひざまずいて深く頭を下げる人もいた。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領夫妻や首相、ソウル市長なども追悼に加わった。
1週間の国家哀悼期間中、多くの商店や企業などは休業している。普段は大勢の人でにぎわうソウル中心部も静まり返っていた。
梨泰院の現場近くでも、地下鉄駅の入り口前に追悼の場が設けられ、たくさんの花や手書きのカード、韓国焼酎(ソジュ)のボトルなどが供えられている。
304人が死亡した2014年のフェリー沈没事故の犠牲者遺族でつくる市民団体も追悼に訪れた。
現場の路地は入口が封鎖されて警備員が立ち、今もごみや残骸が散乱する状況の中で防護服姿の捜査員が現場検証を続けている。
政府の対応に対する疑問も浮上し、雑踏警備が行われていなかったらしいことも明らかになっている。
雑踏に巻き込まれたフランス人交換留学生(22)はCNNの取材に対し、「ある時から空気がなくなった。ほかの人たちに押し潰されて、全然息ができなくなり、気を失った」と振り返った。
警官の姿がほとんど、あるいはまったく見えなかったという証言も相次いでいる。
行政安全省は30日の時点で、梨泰院の雑踏は異常な大きさには見えなかったことから、「通常」の態勢のみで警備に当たったと説明した。一方、ソウル市内の別の地域では抗議運動が予想されたことから相当数の警官を配備していたという。
しかし当局は31日になって、29日の夜、梨泰院には警官約137人を配備していたと述べ、コロナ禍前の約30~70人よりも増やしていたと強調した。一方で、警察庁凶悪犯罪捜査部門トップは「主催者がなく、大勢の人が集まるこうした状況に備えたマニュアルは現時点で存在しない」と明言。警官が配備されたのは雑踏警備のためではなく、防犯や違法行為防止のためだったことを認めた。
犠牲者のほとんどは、コロナ規制が解除されて初のハロウィーンを楽しもうと梨泰院に出かけた若者だった。
行政安全省の31日の発表によると、死者155人のうち10代が12人、20代が103人を占め、男性は55人、女性は99人だった。
このうち外国人は26人で、米国、中国、イラン、タイ、スリランカ、日本、オーストラリア、ノルウェー、フランス、ロシア、オーストリア、ベトナム、カザフスタン、ウズベキスタンから来ていた。
負傷者は149人に上り、重傷者は33人、外国人は15人だった。
ソウル転倒事故、現地の様子は