ロシア、近く最大級の戦果喪失か ヘルソン州で民間人の移転強化

フェリーでドニプロ川の向こう側へ避難するヘルソン州の住民ら/Zvezdanews

2022.10.20 Thu posted at 20:39 JST

(CNN) ロシアが据えたウクライナ南部ヘルソン州の指導者らは19日、大規模な住民の移転に着手した。最大で6万人をドニプロ川の東岸に移動させる。背景にはウクライナ軍の反攻を受けるロシア軍の抗戦能力に対する警戒感がある。

19日朝、ヘルソン市の住民に対して親ロシア派の行政府から直ちに避難するよう呼び掛けるテキストメッセージが届き始めた。ウクライナ軍が住宅地に向かって砲撃を行うとした上で、ドニプロ川左岸(東岸)行きのバスが出る時間を知らせる内容だ。

同じ日にはプーチン大統領が、ヘルソン州を含むウクライナの4州で戒厳令を敷く大統領令に署名したことを明らかにした。これらの4州について、ロシア大統領府は国際法に違反する形で併合を主張していた。

ウクライナ軍は過去数週間でヘルソン州の複数の地域を通じ前進。ドニプロ川西岸に沿って村落や農地を奪取してきた。

一方、ロシア側が州内の部隊に再補給を行う能力は大きく損なわれている。ウクライナ軍がミサイルや迫撃砲による攻撃をドニプロ川に架かるロシア管理下の橋に対して加えているためだ。

ロシアのプーチン大統領が併合を主張するウクライナの4州に戒厳令を敷くと発表した

18日、避難を呼び掛ける言い回しは新たな水準に到達した。ロシアの支援するヘルソン州政府の幹部、キリル・ストレムソフ氏は自身のテレグラムチャンネルに投稿した動画の中で「西側の後押しを受けたウクライナのナチスがすぐにもヘルソンへの攻撃を開始する」「右岸(ドニプロ川西岸)地域からの退去を強く勧告する」と述べた。

翌19日午前8時には、「可能な限り迅速に」ドニプロ川左岸へ渡るよう指示。それから数時間後、州政府は右岸へのあらゆる進入経路を7日間に渡って閉鎖する措置にまで踏み切った。

ウクライナの当局者は、ヘルソン市に現在残っている民間人の数について、人口の半数に満たない13万人前後とみている。

ロシアを後ろ盾とするヘルソン州のサルド知事は18日夜、ロシア国営テレビの取材に対し、5万~6万人をドニプロ川の右岸から左岸に移動させる計画だと明らかにした。

ヘルソン州から逃れているウクライナ側の指導者らは、ロシア側が「ヒステリー」をあおり、住民を怖がらせていると非難。ロシアへの「自主的な国外退去」を実施していると訴えた。ロシア側では、移動してきた住民への住居の支援を約束している。

欧州安全保障協力機構(OSCE)は7月の報告書で、ロシアによる「大規模な民間人の国外退去」について、人道に対する罪に問われる可能性があると指摘した。9月には国連の安全保障理事会も、ロシアによる250万人に対するウクライナからの強制的な退去は人権侵害に該当すると明言した。退去した人々には3万8000人の子どもたちも含まれる。

ウクライナ・ヘルソン州でパトロールを行うウクライナ軍兵士=7日

ウクライナは先週、国連安全保障理事会でロシアの「選別」の仕組みを糾弾。ウクライナの代理の国連大使はウクライナ人がロシアもしくはロシアの支配する領土に無理やり連れていかれ、殺害されたり拷問されたりしていると訴えた。

この大使によると、数千人の民間人が強制的にシベリアや極東といった隔絶かつ窮乏した地域に向かわされているという。

極めて重要な戦略都市

ウクライナへの全面侵攻開始からわずか7日目で、ロシアはヘルソン市を奪取した。これはロシアにとって戦略上及び政治宣伝上の鍵を握る勝利となった。

地理的にヘルソン市の攻略は極めて重要だった。ウクライナの中心を流れる大動脈、ドニプロ川の河口に位置し、クリミア半島に水を供給する運河からも遠くない。ウクライナ政府はロシアがクリミア半島を違法に併合した2014年に、この運河を閉鎖した。

ヘルソン市はロシアが占領した最初の主要都市であり、2月以降奪った唯一の州都。占領下の都市ではマリウポリに次ぐ規模の人口を抱える。

しかし、18日にはウクライナ国防省の情報総局長キリロ・ブダノフ少将がヘルソン奪還への自信を表明。「年末までに相当な進展が見込めるだろう」と語った。

「重要な勝利を収めるはずだ。まもなくわかるだろう」(ブダノフ氏)

フェリー乗り場に長蛇の列、ヘルソン州から避難する住民ら

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