エコなアボカド「エコバド」、環境にやさしい代替品になりうるか

環境に優しいアボカド「エコバド」が開発された/Arina Shokouhi

2022.10.08 Sat posted at 14:05 JST

(CNN) 「グリーンゴールド」とも呼ばれるアボカドの人気が近年急上昇している。世界経済フォーラムによると、世界のアボカドの年間消費量は110億ポンド(約500万トン)にも上るという。

しかし、このアボカド人気が、環境に甚大な負担をかけている。わずか1キロのアボカドを育てるのに約2000リットルもの水が使われ、アボカドの木を植えるための土地を確保するために森林が伐採されている。

そこでロンドンを拠点とする研究者兼デザイナーのアリーナ・ショコウイさんは、環境にやさしいアボカドの代替品「エコバド」の開発を決意した。ショコウイさんは、このエコバドが、消費者がアボカドを食べるのを前によく考えるきっかけになることを願っている。

「グリーン」なデザイン

エコバドは一見しただけではアボカドと見分けがつかない。蜜ろうと、ほうれん草と木炭末を含んだ天然の食品着色料で作られたエコバドの皮は、アボカドの皮にそっくりだ。

またエコバドの果肉は、4つのシンプルな材料でできており、ベースのソラマメ、鮮度を保つためのリンゴ、クリーミーにするためのコールドプレスした菜種油、そして少量のヘーゼルナッツが入っている。またアボカドの種には、栗やヘーゼルナッツが1個丸ごと使われている。

エコバドは、ショコウイさんがロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ(CSM)のマテリアル・フューチャーズ学修士の一環として開発した。修士課程の1年目の終わりにエコバドのコンセプトを思い付いたショコウイさんは、ノッティンガム大学の食品科学者ジャック・ウォールマン氏の協力を取り付けた。

ウォールマン氏は、アボカドのクリーミーな食感の原因を突き止めるためにアボカドの分子特性を研究していた。

ショコウイさんによると、エコバドのレシピを完成させるのに8カ月もかかったという。

ショコウイさんが開発したエコバドは本物のアボカドそっくりの見た目を持つ

持続可能かつ魅力的なアボカドの代替品を作るのは容易ではなかった。

「まず材料の選択肢が非常に限られていた。エコバドには100%地元産の材料を使いたかったからだ。それだけは譲れなかった」とショコウイさんは言う。

ショコウイさんは、エコバドを通して、地元産の食材を食べることによる健康上、環境上のメリットを提供したいと考えた。

当初はエコバドのベースにエンドウ豆やブロッコリーの使用も考えたが、地元の生産量が少なかったため断念したという。一方、ソラマメは比較的栽培が容易で、英国では毎年約74万トンも収穫されている。

しかし、ソラマメはアボカドと分子的に異なる上に、ソラマメの「苦味」を隠すのは容易ではなかったとショコウイさんは言う。

結局、ウォールマン氏の研究チームが、材料間のバランスを取り、納得のいくアボカドの代替品を作る方法を見出した。

アボカド製のカトラリー

地元産の食材へのこだわりや、野菜中心の食事を強調することは、炭素排出量を削減するための鍵だが、一方、持続可能な食料生産にも土地の使用、エシカルソーシング(倫理的な調達)、労働者の権利といった複雑な問題が関わってくる、と英国リンカーン大学の准教授で、食料洞察、持続可能性が専門のウェイン・マーティンデール博士は指摘する。

マーティンデール氏によると、過去10年間にデータ収集技術やブロックチェーン技術が進歩し、食料生産のさまざまな面の追跡・記録が容易になったという。

またマーティンデール氏は、ブラジルで2021年に導入された、森林伐採を行わずに大豆を栽培する農家への融資制度「リスポンシブル・コモディティーズ・ファシリティー」にも言及した。この制度は農家に金銭的利益をもたらす一方、顧客にも保証を提供する。

マーティンデール氏は、アボカドにもこの制度を適用できると考えている。「人々はアボカドが責任を持って管理されている土地で栽培されたか否かを知りたがっている」(マーティンデール氏)

スペインで収穫されるアボカド。1キロのアボカドを育てるのに約2000リットルもの水が使われている

マーティンデール氏のチームは、アボカドの副産物の使い道を研究している。例えば、アボカドの種で作った再利用可能なカトラリー(ナイフやフォークなど)や、アボカドの皮や果肉から取れる潤滑油や食品用の油などだ。

マーティンデール氏は、輸入した果物や野菜を完全に排除するのではなく、それらを適度に使用することこそ正しい方向への一歩と考えている。ショコウイさんのエコバドには「素晴らしい創造性」が見られると評価しながらも、エコバドが今後、輸入品のアボカドの実行可能な代替品となりうるかについては疑問を呈する。

ショコウイさんの卒業以来、エコバドは潜在的な投資家たちの関心を集めているという。エコバドはまだ完成品ではないが、ショコウイさんは、いずれエコバドがスーパーマーケットで本物のアボカドとほぼ同価格で販売されることを願っている。

またショコウイさんは、日本の枝豆をエコバドの材料として試すなど、将来、英国以外の国々で現地の材料を使ってエコバドを作ることにも興味を持っている。

ショコウイさんは「(エコバドの)味は恐らくアボカドと全く同じではない」としながらも「サワードウにのせて食べることができ、おいしくて、見た目がアボカドに似ていて、ヘルシーであれば問題はない」と付け加えた。

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