(CNN) ロシアのプーチン大統領が先ごろ発表したウクライナでの戦争のための「部分的動員」によって、抗議デモや招集ミス、ロシア市民の国外への脱出など混乱が広がっている。
ロシア極東サハ共和国のニコラエフ首長は、未成年の子どもを持つ父親など動員の対象外であるにもかかわらず、一部の住民が「誤って」招集されたと明らかにした。
ニコラエフ氏は、誤って招集された人たちは全員戻されるべきだとし、その作業はすでに始まっていると述べた。
ロシアの有力議員2人も25日、招集に問題が発生していることを認めた。動員は法にのっとって行われるべきであり、招集をめぐって誤りが発生しているとの報道について遺憾の意を表明した。
極東ペトロパブロフスクカムチャツキーで新たに招集された兵士に戦闘用の武器が与えられる=23日/EyePress News/Reuters
マトビエンコ上院議長は通信アプリ「テレグラム」への投稿で、「そのような行き過ぎた行為は絶対に認められない」と述べ、現在目撃している激しい反発は当然のことだとの見方を示した。マトビエンコ氏は各地の州知事に対して、発表された基準を完全かつ絶対的に順守する形で招集が行われるように全責任を負うよう求めた。
ボロジン下院議長もマトビエンコ氏と同じく、適切な配慮を求め、「もし間違いが起きたなら、修正されなければならない」と述べた。
SNSに出回っている動画には招集に関する緊張や悲しみ、混乱が映し出されている。感情的な家族の別れをとらえた場面や招集について口論する新兵の姿もある。
ウクライナ軍からの反攻を受けて、ロシアのプーチン大統領は21日、失速した侵攻を立て直すべく部分的動員を発表した。
ショイグ国防相によれば、今回の動員は従軍経験のあるロシア人に限られ、30万人の予備役が対象となる。しかし、動員令自体には、より幅広い条件が与えられており、ロシア人のなかには将来的にはより多くの招集が行われるとの懸念が広がっている。
部分的動員の発表を受けて、ロシア全土で抗議デモが起きているが、警察が取り締まりを行っている。人権団体「OVDインフォ」によれば、ロシア全土の数十都市で24日までに、少なくとも1472人が拘束された。
対象年齢となるロシア人男性は招集される危険よりも国外へ脱出する道を選んでいる。近隣諸国への陸路での国境越えのために長蛇の列ができた様子をとらえた映像が公開されたほか、過去数日で航空運賃は急騰し、航空券の完売が相次いでいる。
フィンランド南東部にあるバーリマーの国境で入国に並ぶ車とフィンランドの警備当局者=23日/Janis Laizans/Reuters
ロシアと国境を接するフィンランドの国境警備当局者によれば、24日には8500人以上のロシア人がフィンランドに入国した。1週間前の土曜日と比較すると62%増加したという。同当局者によれば、約4200人のロシア人がフィンランドを出国してロシアに向かった。
フィンランド南東部にあるバーリマーの国境はロシアからの入国者が最も多い場所であり、同当局者の25日のSNSへの投稿によれば、現地時間午前8時の時点で車列は約500メートルとなっていた。
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