ヒジャブ燃やし髪切り落とす女性 イラン全土で連日の抗議デモ、死者7人に

女性の死亡に対する抗議が行われ交差点で燃やされたゴミ箱=20日、イラン・テヘラン/AFP/Getty Images

2022.09.22 Thu posted at 12:01 JST

(CNN) 大きな歓声を浴びながら、1人の女性がはさみを振り上げている。髪を覆うはずの「ヒジャブ」は見えない。女性が自分のポニーテールを切り落としてこぶしを突き上げると、群衆から拍手が巻き起こった。その多くは男性だった。

イランのケルマン市で20日夜に撮影されたこの映像は、女性が人前で頭部を覆うヒジャブの着用を義務付けられるこの国で見せた力強い抵抗の証しだった。道徳警察に逮捕された女性が死亡したことに対する憤りは、全土の抗議デモに火を付けている。

デモは21日で5日目に入り、治安当局は同日、治安部隊の1人を含む3人が死亡したと発表した。

一方、人権団体は、これまでに少なくとも7人が死亡したとしている。

22歳だったマフサ・アミニさんは、頭部を覆うスカーフの着用徹底など女性の服装を取り締まる道徳警察によって13日にテヘランで逮捕され、16日に死亡した。

アミニさんの死を発端として、イスラム共和国の自由をめぐる問題や、制裁による経済的打撃など、幅広い問題に対する国民の憤りが噴出した。

ヒジャブに火をつけた女性=イラン・テヘラン中心部

今回の抗議デモは、その規模や激しさ、女性の権利を訴える性質が際立っている。これほどの規模の抗議運動は、政府がガス料金を値上げした2019年のデモ以来、3年ぶりだった。

クルディスタン州で17日に営まれたアニミさんの葬儀から始まったデモは、イラン全土に広がり、デモ鎮圧を図る治安部隊との衝突につながった。

イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は21日、イラン・イラク戦争(1980~88年)を記念して退役軍人や軍司令官を前に演説を行ったが、抗議デモには言及しなかった。

政府系のファルス通信によると、西部の都市ケルマンシャーの検察は、20日の「暴動」で2人が死亡したと発表した。 国営イラン通信は、南西部ファルス州の州都シラーズの抗議デモで警察「助手」1人が死亡し、4人が負傷したと伝えた。

イランの人権侵害を監視するクルド人権団体によると、20日の抗議デモでは23歳と16歳の参加者が射殺され、今回のデモによる死者は7人になった。

マフサ・アミニさんの死亡が発表され、イランでは国民の怒りが高まっている

20日夜も数千人が抗議デモを展開し、首都テヘランから従来は保守の地盤だったマシュハドまで、全土の都市や町からデモの映像が相次いで投稿された。

映像には、デモ参加者が「女性、生命、自由」と叫ぶ姿が映っている。かがり火をたいたり、警察ともみ合ったり、女性が髪を覆っていたスカーフを燃やしたり、最高指導者のポスターを破壊して「独裁者に死を」と叫んだりする映像もあった。

イランのクルド人地域でも、ケルマンシャーやハマダンなどほぼ全ての町で抗議デモが巻き起こった。


女性の死亡に対する抗議が行われ交差点で燃やされたゴミ箱=20日、イラン・テヘラン/AFP/Getty Images

テヘランの革命広場付近では20日、警察による強行対応も目撃されている。目撃者はCNNの取材に対し、「若い男性2人が私服警官や暴動鎮圧警察に殴られて暴行され、地下鉄の入り口前のワゴン車へ引きずって行かれた」「けがをして歩道に倒れていた少女は救急車で病院に運ばれ、革命広場の北側ではほかに5人が逮捕された」と話している。

人権団体は、抗議デモで450人が負傷したと伝えている。

ヒジャブ燃やし髪切り落とす女性 イラン全土で連日の抗議デモ

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