中国軍、ロシア軍と同じ潜在的な弱点 米国防大の新報告書

中国軍の新兵と退役軍人とが参加する行事の様子=福建省漳州市/Future Publishing/Getty Images

2022.09.17 Sat posted at 13:55 JST

韓国・ソウル(CNN) 中国軍はウクライナで苦戦するロシア軍と同じ潜在的な弱点を抱えており、同様の戦争を遂行する能力の妨げになる可能性がある――。米国防大学がそんな報告書を公表した。

報告書では、軍種を超えた訓練の不足が人民解放軍(PLA)のアキレスけんになる可能性があると指摘している。ただ、専門家は中国の能力を過小評価することには依然慎重で、ロシアとの比較には注意を促している。

報告書では2021年までの6年間、PLAの陸海空軍とロケット軍、戦略支援部隊の5軍種に所属する幹部将校300人以上の経歴を調査した。その結果、どの軍種においても、幹部はキャリアを開始した軍種以外で作戦経験を積む機会に乏しいことが判明した。

別の言い方をすれば、PLAの陸軍兵は陸軍兵のまま、海軍兵は海軍兵のまま、空軍兵は空軍兵のままキャリアを過ごす。報告書では、PLAの要員がそうした狭い組織の外に出ることはまれだと述べ、軍種をまたいだ訓練が1986年から法律で義務付けられている米軍とは対照的だと指摘している。

報告書はさらに、こうした「硬直性が将来の紛争で中国の有効性を低下させる可能性がある」とし、特に軍種をまたいだ高レベルの統合行動が求められる紛争では問題になると指摘。PLAは「軍全体のまとまりに欠ける」ウクライナでのロシア軍と同様の問題に見舞われる可能性があると示唆した。

7カ月前のウクライナ侵攻開始以降、ロシア軍の組織構造の欠陥は外部から見て明らかになっている。

専門家によれば、ウクライナ軍の反転攻勢で最近敗走した際、ロシアの地上部隊は航空支援を欠いていた。開戦当初には兵たん面の問題で補給能力がそがれ、ロシア軍のトラックは地形に適したタイヤもなく、整備不足による故障が相次いだ。

漳州市で実施された中国陸軍の演習=9月2日撮影

報告書の著者であるジョエル・ウズノー氏によると、PLAの幹部は軍種をまたいだ訓練の不足から、これと同様の問題に直面している。

「例えば、作戦指揮官が後方支援部門でキャリアを広げる機会はほとんどない。その逆もしかりだ」(ウズノー氏)。同氏は米国防大学中国軍事研究センターの上級研究員を務める。
 
報告書によると、21年に四つ星司令官(米軍の統合参謀本部議長やインド太平洋軍司令官、あるいは中国の中央軍事委員会幹部や戦区司令官など)を比較したところ、米軍の40人全員が統合軍の経験があったのに対し、中国軍では31人中77%しか統合軍の経験がなかった。

また、米国では四つ星司令官のほぼ全員が作戦経験を持つが、中国では半数近くが「プロの政治将校」だという。

ハワイにある米太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター氏は、今回の報告書は「中国の現状や今後について私が見た中で最良の分析だ」と語る。

一方で、この報告書を基にウクライナと似た戦争でのPLAの戦いぶりを予想するのには慎重になった方がいいとも指摘した。中国軍にはロシア軍より優れた点が他に数多くあるからだ。

中国は新兵訓練の質がより高く、現在はもう徴集兵に依存していないが、ロシア軍は下士官の「80~85%を入隊7カ月の徴集兵に頼っている」(シュスター氏)。

ロシアとは異なり、中国にはプロの下士官も存在するという。

陸海軍の舞台が行う実弾演習の様子=漳州市、8月24日撮影

現在ハワイ大学で教えるシュスター氏は、中国は統合作戦能力の点で4~5年ほど米国に遅れを取っていると推測しつつも、最近の演習を見れば「彼らが追いつきつつあることがうかがえる」と警鐘を鳴らした。

ウズノー氏の報告書では、中国軍と米軍の指導者の人口動態上の違いにも触れており、「中国の上級将校は年齢や教育、ジェンダー、民族の点で同質的だ」と指摘する。

四つ星の階級で見ると、中国軍の将校は米軍に比べ平均年齢が高く(64歳対60歳)、軍隊経験も長い(46年対40年)という。

米軍の指導層はより多様性に富み、女性が2人、アフリカ系米国人が3人いるが、PLAの指導層は全員男性で、99%が漢族と同質性が高い。

そして最後にひとつ、明らかな違いが存在する。米軍の四つ星将校の58%が外国で軍務に就いた経験があるのに対し、中国の四つ星将校は海外経験が皆無という点だ。

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