(CNN) 今年7月にパワーリフティングで女子世界記録を更新した米国のタマラ・ウォルコット選手は、5年前に初めてジムに足を踏み入れた。CNNとのインタビューで、パワーリフティングに救われ、人生が変わったと振り返っている。
ウォルコットさんがパワーリフティングに出会ったのは2017年のこと。その1年前から、減量のためにダンベル運動は続けていた。
子どもたちを出産した後に離婚を経験し、夜中に過食を繰り返していたころの体重は約188キロ。その後、ダンベル運動と食生活の改善で45キロ減量したものの、精神状態は最悪だった。「パワーリフティングが私の命を救った。私を私自身から、食物依存症から、うつ状態から救ってくれた」と話す。
ウォルコットさんは7月にバージニア州で開かれた大会で、3種目(スクワット、ベンチプレス、デッドリフト)の合計重量735キロという世界記録を達成。同じ大会でさらにデッドリフト290キロと、自己の世界記録を更新した。
ここに至るまでに、男性優位のパワーリフティング界に受け入れられるための苦労も経験した。最初はウェートルームに女性1人だけということが多く、横目で見て鼻で笑う人もいた。胸の形が変わるから女性はベンチプレスをしないほうがいいと言われたり、「彼女はなぜここにいるんだ」という声が聞こえてきたりした。
だが今では女性たちがパワーリフティング界を席巻していると、ウォルコットさんは言う。今年3月には、女性にパワーリフティングを広め、マイナスのイメージを払拭(ふっしょく)することを目的に「ウィメン・イン・パワーリフティング」という団体を立ち上げた。
競技中にイヤリングや付けまつげ、アクセサリーを着け、時には口紅を塗るのもそのためだという。美しくてセクシーな女性が重いバーベルを持ち上げたっていい、というのがウォルコットさんのメッセージだ。
パワーリフティング人生に今も大きな影響を及ぼしているのは、19年に亡くなった祖母だ。ウォルコットさんが育ったカリブ海の島で料理人をしていた。豪快で気前の良い性格だったという。
祖母の思い出にはいつも勇気づけられてきた。デッドリフトで225キロがどうしても挙げられずに1年ほど苦しんだ時も、祖母が亡くなってから2カ月ほどのある日、祖母のためにやろうと心に決めたら、なぜか成功したという。
パワーリフティングはウォルコットさんに人生の目的と自信を与えてくれた。今は毎日4.5リットルの水を飲み、十分な睡眠時間を確保するようにしている。子育てとフルタイムの仕事をしながらの生活は大変だが、深夜にジムでトレーニングをしたり、暇を見つけて仮眠を取ったりとやりくりしている。
今コーチと話しているのは、スクワットで700ポンド(約320キロ)、ベンチプレスで400ポンド(約180キロ)、デッドリフトで700ポンドを挙げるという「747」の目標だ。これまでも常に自分で目標を設定し、それを越えてきた。
ウォルコットさんは自分自身のために、内なる声に駆り立てられて競技に取り組む。「これは私と私自身の戦い。1日ごとにより良い自分になることを自分に課す。そんな側面がとても楽しい」と話している。