湖の放流と決壊で集落が孤立、住民に迫る命の危険 パキスタン

ひざまで泥水につかり話す住民の男性=6日、マンチャール湖付近/Javed Iqbal/CNN

2022.09.08 Thu posted at 17:00 JST

パキスタン・シンド州(CNN) 「あまりにもすごい水だ。みんなおぼれてしまう」――。パキスタン南東部シンド州にある同国最大の湖マンチャール湖の度重なる放流や決壊で、多数の住民が孤立し、生命の危険にさらされている。

マンチャール湖は6日だけで少なくとも3回決壊し、近隣の村が深さ数十センチの水に浸かった。

当局はマンチャール湖の水位を下げるため、時間との闘いを強いられている。約4800万人が暮らすシンド州の人口は同国で2番目に多い。マンチャール湖が完全に決壊すれば、近郊の都市も浸水の恐れがある。

それを避けるために当局は4日、2度にわたる放流を行って、人口の少ない地域に湖の水を流れ込ませた。灌漑(かんがい)担当相が7日、CNNに語ったところによると、この放流で小さな村落が洪水に見舞われて約13万5000人が被災した。それでも人口155万人の都市ダドゥの洪水を避けるためには必要な措置だったとしている。

マンチャール湖からは3日にも水があふれ出た。当局によれば、これは放流ではなく自然現象だった。

4日の放流については近隣の集落の住民に警戒を呼びかけて避難を促していたという。

マンチャール湖からの水により自身の村の一部が取り残されていると話す現地の男性

「我々は救援に最善を尽くそうとしたが、災害の規模があまりにも大きすぎ、被災者もあまりに多かった」と灌漑担当相は述べ、「政府が全員に避難所や食料や医薬品を提供することはほぼ不可能だ」と説明。陸軍や海軍も動員して救援活動を支援するとともに、村落とも連絡を取っているとした。

シンド州首相は7日、湖の放流は望まなかったとしながらも、もし放流しなければ、湖から100キロ離れたセーワンやダドゥ、メハルなどの都市が危険にさらされていた可能性があると指摘した。

こうした都市は今のところは被災を免れているが、周辺の村落では被害が広がっている。


マンチャール湖付近の住民は村が依然危険な状態との警告を政府から受けたという/Javed Iqbal/CNN

「(私たちの)村が水没した。到達する手段がない」。CNNが道路脇で話を聞いた男性は、足首のあたりまで水に浸かりながらそう語った。

湖に近いこの男性の村では、10~15世帯が取り残されているという。この村に通じる幹線道路は最大で深さ1.5メートルの水に覆われ、救助活動を行うのも危険な状態にある。

「救助隊が(取り残された住民を)救出できる手段がなく、(住民が)脱出できる手段もない」と男性は危機感を募らせる。

ひざまで泥水につかり話す住民の男性=6日、マンチャール湖付近

別の村の住民は、マンチャール湖の放流は完全に不意打ちだったと訴え、ひざまで泥水につかりながら「作物も家も破壊された。放流はいきなり行われて、私たちは知らなかった。誰も私たちに知らせてくれなかった」と話した。

この男性の周りでは畜牛がほぼ完全に水に浸かり、頭だけを空中に出してあえいでいた。

多くの住民は、さらなる洪水の危険がある中でそのままとどまり続けるか、自宅を離れて別の場所に避難するかの選択を迫られている。

欧州宇宙機関(ESA)の衛星画像は、記録的な大雨の影響で過去2カ月の間にマンチャール湖が膨れ上がり、周辺の数百キロ平方メートルを覆った様子をとらえている。湖にあった島や半島は消滅し、周辺の陸地はのみこまれていた。

衛星画像がとらえた湖は、放流後も水位が高いままの危険な状態が続いていた。近隣の村の窮状が一層深刻化することも予想される。

湖の下流にある村の住民(35)は、危険な状態が続いていると政府から警告されたといい、「ほかに手段はないと告げられた。しかし私たちの地域は水没した」と訴えた。

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