パンデミック中に精神疾患の患者が増加、若年層では4人に1人 米CDC

米国では45歳未満の若年層で精神疾患の治療を受けた人の増加が目立っている/Shutterstock

2022.09.09 Fri posted at 08:38 JST

(CNN) 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)中に、米国で精神疾患の治療を受ける成人の割合が高まったことが、米疾病対策センター(CDC)の新たなデータで明らかになった。

CDCが7日に発表したデータによると、2021年に精神的な不調でカウンセリングやセラピー、治療薬の処方を受けた成人の割合は全体の22%近くと、19年の約19%を明らかに上回った。

米ジョンズ・ホプキンス大学の精神疫学者カリオペ・ホリング氏によると、背景にある要因としては、治療の必要性が高まったことに加え、治療が受けやすくなったことも挙げられる。

パンデミックによって自分自身のケアをするべきという声が広まり、遠隔医療も普及した。それがデータに反映されていると、ホリング氏は指摘する。

CDCの報告では、特に45歳未満の若年層で精神疾患の治療を受けた人の増加が目立っている。

治療を受けた率を年齢層別にみると、19年の時点では18~44歳の層が最も低かったが、21年には5ポイント近く上がってトップに立ち、23%を超えた。

ホリング氏によれば、この年齢層はもともと不安障害やうつなどが最も起きやすい時期のひとつにあり、そこへパンデミックが重なったとみられる。

WHOは不安とうつ病が世界的に「大幅に」増加していると警鐘をならしている

男女別では、19~21年の間、女性が常に男性を10ポイントあまり上回っていた。21年は治療を受けた女性が29%に達したのに対し、男性は18%にとどまった。

人種別では白人で特に割合が高く、21年には30%あまりが治療を受けた。黒人は15%、中南米系は13%、アジア系は11%だった。

19~21年で増加の幅が最も大きかったのはアジア系だった。20年から21年にかけてはアジア人を狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加し、警官の暴力と人種差別に対する抗議運動が広がった時期だ。

ただしホリング氏によると、非白人は経済的理由や医療現場での人種の偏りなどから精神医療を受けにくい傾向があり、治療を受けた割合は白人より低いレベルにとどまった。

パンデミック中の精神的不調については、世界保健機関(WHO)のデータでも、世界で不安障害やうつの症例が急増し、1年目で25%増となったことが指摘されている。WHOのテドロス事務局長は、パンデミックが世界の精神保健に及ぼした影響を示す「氷山の一角」にすぎないとして、各国政府に対策を呼び掛けた。

ホリング氏によると、米国ではパンデミック初期の数カ月に恐怖心や不安感が強まり、精神的不調の増加がピークに達した。その後カーブが収まりはしたものの、影響は長期化している。例えば薬物の過剰摂取による死亡例は、22年になっても記録的な数の報告が続く。

米厚生省はこの夏、自殺防止専用ダイヤル「988」の運用を開始した。ホリング氏はこれを前進として評価する一方、市民の精神的健康を守るためには、政府がパンデミックや住宅危機、気候変動、銃暴力、人種差別などの根本原因に取り組まなければならないと指摘した。

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